第四十八話 本当に怖いこと
薄暗い検査室に警官の声が響く。
『携帯の履歴にW、G、P、Bと言う四人の人物がいたのだがこれは誰だ?』
礼治はイスに縛られていた。しかし、余裕の表情は消えない。
『あれ?どうしたんです?警察は復讐者を逮捕する権利は剥奪されたはずですよ』
と礼治は冷たく言い放ちさらに
『そんな権限ないんですからこれは犯罪ですよ』
と付け足した。
『いいですか?世の中は強い人が勝つんです。私は貴方達より強く命令する立場にあった。ただそれだけの話です』
警官は舌打ちをした。礼治の言っていることが正しいからである。そう、警察は逮捕する権利をすでに失っている。遅すぎた。
捕まえるのが遅すぎたのだ。
負けた、復讐者に
『くそっ!』
と警官は机を叩きつけた。礼治はニヤリとする。
『離すしかない……』
と礼治は自由の身となりかけていた。しかし、予期していなかった事態が起こった。
『じゃあ、死ね』
と警官の一人が礼治の頭に銃を突き付けたのだ。
『オレがお前を殺してやる!』
と。
『くっくっく。そうしたら自分が犯罪者だぞ。しかも、警視庁最高指揮官を殺した大犯罪者だ。』
と笑いながら言う。しかし、思ったよりも警官の決意は固かった。
『あぁ、それでも構わない』
『おい、早く動け警察。これは紛れもない犯罪だぞ』
と礼治は叫ぶ。警官の引き金に触れた手が動こうとしたまさにその時。警官が捕らえられた。
『残念ながら赤坂最高指揮官が正しい』
『我々、警察は差別なしに正しい方を尊重しなければならない』
と二人の警官。
『赤坂最高指揮官、我々は既に貴方への逮捕権を失っています。大変失礼しました』
と深々と礼をした。
『くっくっく。まぁ、これからも更に警官の仕事に励むが良い。期待している』
と偉そうに部屋を去っていった。部屋から礼治がいなくなった途端に二人は崩れた。銃を突きつけた警官は
『小村獣太、大林泰三、悔しく無いのかよ!』
と叫んだ。獣太は
『あぁ、悔しいさ、上村健二。だが警察は感情で動いてはいけない。アメリカの二の舞になりたいのか?』
『それでも動ける警官になりたいです』
『それは警官でも何でもねぇんだよ、新人』
と健二よりもかなり先輩の泰三。獣太がそれに続く。
『それにお前には殺人未遂がかかってしまった。自分の行動は考えてからやれ!』
『オレはお前らみたいなやつを警察とは思わねぇ!』
泰三と獣太の視線が鋭くなった。
『何だと?てめぇ、逮捕してやろうか?』
『逮捕なんざ怖くねぇ!怖いのはさっきみたいなことになることだ』
健二は思いっきりドアを蹴って検査室を後にしたのだった。