第四十七話 楽園(エデン)
『今後、大阪府警は復讐者に対し逮捕する権利を一切剥奪することとする』
このセリフで大阪は震え上がった。カメラのフラッシュを浴びながら格の高そうな男が質問攻めされている。休日となり買い物に来ていた舞とめぐみはビルの巨大な液晶の前で立ち止まっていた。
思考が全て固まってしまう。自分達はトモダチをいじめ、高校を中退にまで追い込んでしまった。罪は大きいだろう。
そうして、次の一言で更に不安は大きくなる。
『はい、復讐者の支援をしていくことを決めました』
復讐者が悪者と言う思想はとっくに終わっていたのだ。
『この1ヶ月でいじめを受けた、いじめをみたと言う全国一斉アンケートでは割合が大幅に減少しましたし、人の嫌なことをする人、つまり犯罪も激減しています』
舞とめぐみもいじめは止めた。しかし、いつ復讐が来るのかと内心はびくびくしていたのである。そして、警察がいるから大丈夫だと考えるようになっていたのだ。
しかし、その警察が味方をしてくれなくなってしまった。
つまり、自分達はいつ殺されてもおかしくないのである。
これは事実上「死」を意味する。
『ま、舞。今すぐ帰ろうか』
とめぐみが明らかにおどおどしながら言った。無論、舞も首を縦に降るしかない。大阪は『復讐都市』および、『楽園』として成長していくのだ。
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大阪のこの報告を受けてその後、各地が次々と同じような行動をとっていく。
11月6日 大阪府
11月11日 東京都・神奈川県・北海道
11月12日 沖縄県・福島県・奈良県・広島県
11月18日 岐阜県・愛知県・長崎県
……
12月9日 青森県・埼玉県
で、全ての都道府県が復讐者に屈してしまう。こうして、復讐の勢いは更に増す結果となった。
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『警視庁最高指揮官、赤坂礼治よくやった。お前のサイトに60億円、振り込んでおいた』
『了解です、G様』
Gはフッと笑った。
『これで楽園の建設も楽になった。そうして世界を平和にすることもな。合言葉は?』
『全てはG様のために』
電話が切れた。適当にトイレの水を流し、ドアを開けた。そこにいたのはーー
『そういうことだったんですね』
銃を持った警官達。礼治は酷く焦った。
『何を言っているんだね!?わ、私はただトイレを使っただけだが。』
警官は
『取り押さえろ』
の言葉で礼治に手錠をかける。くっ、と礼治の舌打ちが聞こえる。警官は礼治のポケットから抜き取ると、後ろのスーツの男に渡す。
『どちらにせよ、この携帯を見れば分かることだがね、礼治容疑者、いや犯罪者』
と笑いながら言う。そのまま礼治は取調室へと運ばれたのだった。