第四十三話 作戦中止
その後、彩那はベッドの上で目を冷ました。携帯で時間を確認すると午後9時だ。
その部屋にはBとWがいた。二人共イスに座ってコーヒーを飲んでいる。先に気付いたのはBだった。
『よぅ、彩那。目を冷ましたか』
『あれ、私何してたんだっけ?』
それにはWが答えた。
『お前は3時くらいからずっと寝てたよ。さっきはすまなかったな』
彩那は時間を巻き戻した。Wに殺人の基本を習って、ライフルで女を殺した。
『いえ、私は殺人出来るような性格じゃないです。すみません』
彩那は小さな声で謝った。もう、ここにもいられないだろう。もしかしたら殺されるかも知れない。しかし、そんな想像とは全く違った答えが返ってきた。
『優しいな……』
そう言ったのはW。
『いじめられて人の残忍さを知ってなお、人を守ろうとする。やべぇ、オレお前に惚れちまったかも』
そんな思わぬ返事に彩那は
『えっ?』
と驚くしかなかった。Wは誤魔化すようにこう告げた。
『とにかく作戦は中止にする。』
そう言ってBにWは目配りした。ここからは任せたぞ、とでも言っているようだった。次にBが話始める。
『お前、学校行く気ない?』
彩那は顔を上げた。
『まぁ、あんな思いしたのに行くかなんて聞く方がおかしいか……』
とBは期待していなかったが彩那は行きたかった。このまま高校生活を終わらせたくない。
『わ、私は学校に行きたい』
その瞬間、Bが振り返った。Wも目線が一瞬で彩那に向いた。
『お、お前正気か?学校でのこと忘れたのか?』
彩那はしっかりとBの目を見つめた。
『このままじゃ終われない……それに世界はそんなに悪い人ばっかじゃないよ』
そう言いながら脳裏に浮かべたのは慎太郎の笑顔だった。
もう一度だけで、良い
慎太郎じゃなくても、良い
だから、貴方のような素敵な人に会いたいの
『だから、私学校に行きます』
それを、聞いたBは
『分かった。もう手配はしてある。東京都橘高校だ。お前の学力ならば試験は無くても良いと学校側が行ってくれた。授業料、制服、その他はこちらで持つ』
こうして、彩那に再び学校に行く機会が訪れたのだった。