第四十二話 震え
グロテスクな表現入ります。苦手な人は飛ばして読んで下さい。
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ライフルの銃口が徐々に上げられて遂に動けない女へと向けられた。女はジタバタする。しかし、動けない。ただ、殺されるのを待つだけ。
彩那は照準を合わせた。手が震える。そのせいで照準が上下左右にぶれる。
人を殺すことは想像とは全く違う。目の前にいる女は「人」だ。体中をまだ温かい血が流れている。
殺せない……
引き金が引けない……
くっ!!
どうしたのだ?あれほど自分は苦しんだじゃないか。時には殴られ、時には蹴られ。
あんなにも苦しめられたじゃないか。
なのに、なんで?
やっと引き金が引けた。大きな銃声がコンクリートの部屋に響いた。しかし、弾は右上に大きく外れていた。
『くっ……』
なぜか目から涙が溢れでた。
『うぅ……』
ライフルを置いてその場に座り込んだ。そして、泣いた。泣くしかなかった。
『やっぱ、無理か。両親を殺されてるんだし、それもネックなんだろうな……。』
Wはそう言いながら彩那に近づきライフルを手にした。そうして、狙いを定める。
バァン!!
銃声と悲鳴が重なった。彩那は顔を覆った腕を降ろし、様子を窺った。すると、とんでもない物を見てしまった。
女の頭は吹き飛んでいた。正確に言えば首から上がなかった。白いコンクリートが赤に染められている。少なくとも女から半径1メートルは白い部分が見えない。首から赤い物が流れていた。
これがライフル……
特にこれは銃弾が鋭く尖っていた上に回転をかけて抉る非常に殺傷能力の高いライフルだった。
『いや……こんなの嫌よ!!』
さっきまで同じ世界に生きていた人間の頭が跡形もなく無くなっている。さっきなら話すことも可能だったのに、話すことも出来ない。もしかしたら気が合う人間だったかも知れないのに。
『おい、大丈夫か?』
W、こいつは狂っている。狂人だ。
『嫌、近寄らないで』
彩那はWの手を振り払った。立ち上がろうとしたら意識が猛烈に薄くなっていった。
そうして、何も見えなくなった。
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グロテスクな表現入ってすみませんでした。