第三十九話 大阪刑務所
大阪刑務所に1台のパトカーが止まった。中から出てきたのは担当に当たった南レイと蒼井蘭だった。人の気配がしない大阪刑務所に入っていく。
入り口のガラスは派手に割れていた。ゴクリと唾を飲む音が聞こえる程静かだった。何故かホラー映画を想像してしまう。
『敵が潜伏している可能性があるわ。右側から回って。私は左側から回るわ。』
戦闘経験のあるレイが指示を出した。
『いい?合図は突入だわよ。』
蘭は黙って頷く。
『じゃ、突入』
二人が一気に動き出した。手には拳銃。あらかじめ使用許可を取っておいたのだ。ドアを蹴って開けると広いロビーが待ち受けている。イスはバラバラで、ガラスは辺り1面に飛び散っている。
誰もいない。レイは入り口から見て左へと移動した。蘭はその逆だ。レイは目の前に現れたドアを足で開ける。拳銃を向けながら慎重かつ迅速に調べていく。
ロッカーの中、袋の中まで丁寧に調べあげた。その部屋には何もない。
そう結論づけて部屋を出た。その時だ。完璧だったレイに一瞬の隙が出来てしまった。
『動くな』
頭に銃が突き付けられた。レイは目を瞑る。
『弾を抜いて銃を捨てろ。』
レイは仕方なく黙って従う。レイは敵がどんな人間なのか分かった。敵は不良だ。かつてそいつらの一番嫌いな場所だったが今では溜まり場になっていたのだ。
そして、相手は気配や音も無く近付いてきた。アメリカで戦闘慣れしている私が捕まったのだから……。
『レイさん、助けて』
やはり蘭も捕まっていた。まぁ、期待値は少なかったのだが全くと言うわけでは無かったのだから頑張ってほしかった。とは言えこの状況では何も出来ない。
私が捕まるとはうかつだった。
『あひゃひゃひゃ。良い女っすね。どうします?』
と茶髪でチェーンやピアスチャラチャラの男が言う。
『つか、こいつら大したこと無かったっすね~。その前の男はヤバかったっすけど。』
と続けた。それに対しリーダーらしき男も答える。
『ありゃ、プロだ。気配も音も空気の流れもあったもんじゃねぇ。視界が360度のやつしか気付けねぇよ。どうせ、ここもあいつが潰したんだろ?』
それに蘭は反応した。
『潰したやつは誰ですか?名前とか何か言ってませんでした?』
言うわけないだろ、とその場の誰もが思った。無視するようにリーダーは話を続ける。
『で、こいつらどうする?殺すか?』
殺すと言う言葉に蘭は過剰反応を見せた。バタバタと暴れまわった。しかし、この行動が吉と出た。
『この女ぁ!』
男が叫んで発砲するが当たらない。そして、レイを抑えていた男も発砲し始めたのだ。当然、レイへの警戒も無防備になる。
男の顎にパンチを食らわせ腹を蹴る。男はドサリと倒れた。レイは足元の弾をすぐに銃に詰めた。そのまま男の頭を撃ち抜いた。そのままリーダーへと銃を……。
いない……
どこへ行った……
突如、背中に鋭い痛みを感じた。