第三十五話 G
目の前にある大きなスクリーンにGと書かれているページが映る。
『川島彩那。Bから話は聞いている。』
と、いきなりスクリーンの方から声が聞こえた。
『私はG。この世の神だ。』
神……
ゴッド……
だとすればGODのGなのだろう。
『あなたがこの世の神……。』
『あぁ、そうだ。いいか、川島彩那。この世は腐っている。他人の前では表面上だけのトモダチを装い、裏では陰口が繰り返される。さらに、露骨に感情を剥き出しにし、大勢で罵倒し殴る。まさに愚行だ。』
彩那の心にGの言葉が氷のナイフのように突き刺さる。
親がいないだけで差別され、いじめられた日々。自分の存在意義はいつからかそいつらへの復讐へと変わっていた。
そうだ、私は復讐する。
いや、しなければならない。
全ての人間の為に
自分のために
彩那の目が赤く光った。
『そう、その目だ。復讐に飢えている目。お前のような人間がこの世を変える。いや、変えなければいけない。そして、幸せになる権利も持っているんだ。』
とGは1度ここで言葉を切った。そして、こう続けた。
『川島彩那、お前には期待している。お前にアルファベットをあげる日も遠くはないかもしれない。また会おう。』
ここで通信はプツリと切れてしまった。静寂が空間を支配する。
『お前にパスワードとコードネームだ。』
と、Bは金の板を彩那に渡した。その板にはパスワードとコードネームが確かにとってあった。
『お前にパスワードとコードネームを渡した瞬間にもうお前は組織の一員となった。それにアルファベットも貰えると良いな。』
『ア、アルファベットって?』
『何でもねぇよ。それより、お前の部屋と施設を案内するから来い。』
彩那は明るい表情でBに付いていくのであった。
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アメリカ合衆国
『ようこそ、稲垣総理、いや、稲垣元総理大臣。』
メンデル大統領が稲垣を温かく受け入れた。もちろん、メディアなどは一切いない。完全なるプライベートとして二人は会っていた。
『で、報酬の件なんだが、もう一回確認しておきたい。』
『計画の準備は出来ているのか?』
『ああ、もちろんさ、ミスターイナガキ。』
稲垣元総理大臣はニヤリと微笑んだ。
『日本円で20000000000円だ。ドルに換算すると約200000000ドルだ。』
次はメンデル元大統領がニヤリとする番だった。
裏で計画は順調に動き出していた。
X計画、始動開始