第三十四話
大きな建物が目の前にあった。頑丈そうな建物だった。
『ここがお前の拠点となる。いや、お前のじゃないな、反いじめ連合全員の総拠点だ。』
東京都千代田区
こんな目立つところに立てて大丈夫なのかと不安になる。
『お前、この建物の安全性知らないだろ。』
と、Bが言って自分の名前を言った。とは言ってもBと言ったのだが。そうして、機械が読み取ると、
『B様。声帯検査が本人と一致しました。』
と、なり、機械の画面の下からキーボードが出てきた。Bが暗証番号を打ち始める。彩那は絶句した。なぜなら、その暗証番号が漢数字とローマ数字、そして算用数字と、数字だけで三種類もあるのだ。数字だけの暗証番号でも絶対に開けられない。そして、アルファベットの大文字、小文字、日本の平仮名、片仮名を合わせた計七種類もある。
ーというか、覚えられないでしょ……。
このボードに平仮名50個、片仮名50個。アルファベットの大文字が26個、小文字が更に26個。数字が10×三種類で30個。つまり、合計232個もキーがある。
あ、ありえねぇ……
と彩那は心の中で嘆いた。
『で、暗証番号を入力したら次は手をかざせ。』
指紋の検査である。
『で、指紋検査もパスしたら次は眼球の検査だ。』
目をかざすと青い光がBの目に当たる。本人と認識されたのか、画面が建物内と繋がった。1人の男性が画面の奥で優雅にワインを飲んでいた。
『G様、Bです。例の女性を連れてきました。彼女にはまだパスワードも無いので私のパスワードで二人を中に入れて下さい。』
ここで新たな人物、Gが登場した。
Gと呼ばれた人物はそれを聞いてパソコンをいじる。すると、目の前の鉄扉が開いた。
『これで最終確認だ。』
と、言って中の足元の板のようなものに乗った。板は次第に前へと動き出す。青い光が二人を包み込んであらゆる情報を取り出していく。体重、身長、スリーサイズに、足と胴の割合、などである。今回は体重が二人で板に乗ったため正確に出なかった。しかし、検査の後の機械の画面には、二人の情報がびっしりと載っていた。まるでスパイ映画を思い出す。
最終検査を終えて、検査室から出ると、そこはまさしく金持ちの家であった。シャンデリアにテーブル、銀食器に高価なティーカップ。
そこはまるで高級住宅の一部屋のような場所だったのである。