第二十六話 裏切り
手紙の字は間違いなく慎太郎だった。死んだはずの慎太郎。警察の検査結果によると慎太郎がハイジャックをしたのはほぼ100パーセント、慎太郎らしい。でも、この手紙の持ち主が慎太郎ならばハイジャック犯は慎太郎説から覆る。彩那は久しぶりに胸が踊った。しかし、彩那は2枚目があることに気付いてしまった。2枚目は真面目に書かれていた。
『愛すべき彩那へ
この手紙を彩那が見る頃には既にオレは彩那の前にはいないでしょう。金曜日の夜は本当に酷いこと言ったな。ごめんな。だけど、それは彩那といると計画に支障が出ると思ったからだ。彩那とずっと一緒にいたい、そうして計画を実行できないのでは、と思ったからだ。』
『うぅぅ……』
彩那の目から滝の様に涙が溢れだした。手紙はまだ続く。
『オレはこの世の犠牲となった。これからは彩那、お前たちが変えていくんだ。そのためのことについて指示する。いや、アドバイスする。1枚目に書いた場所に行け。そこで、革命の中心人物がいる。』
ボス……
彩那は窓越しに外を見た。相変わらずの雨だった。今日は行くことをやめ、明日行こうと彩那は思った。そして、ベッドに倒れこむと意識はそこで途絶えたのだった。
大阪倉庫……
奈実は扉を開けて外へと出た。そこにあるのは水、そう雨だ。奈実は何の躊躇もなく地面に倒れこんだ。水溜まりの水を舐める。少しでも喉を潤したい、その一心である。
その時だった。嫌な音がみんなの脳裏に響いた。そう、パトカーのサイレンである。気が付くとみんなは奈実を置いて走り去っていた。