第二十五話 麻薬に堕ちたトモダチ
奈実はひたすら水を求めた。水、水と連呼する。さすがに危険だと判断した夏希は水を持ちに行く。
喉に水分は少しも残っていなかった。猛烈に喉が渇く。声も絞り出せない。回りはただ見ることしか出来なかった。今の奈実には回りが見えていない。耳に入ってくるのは水と言う奈実の声しかない。本当に死ぬのではないかと疑う程に奈実は麻薬の虜になっていた。
夏希がようやく水を持って現れた。奈実は水をみるなり飛び付いた。その不意の行動に奈実は動けなかったため奈実に押し倒される。おかげで水はこぼれて夏希の服を濡らした。
『きゃっ』
と夏希の声が響く。しかし、そんなのはお構い無し、という様に奈実は水を欲しがった。もう、服についたやつでもこぼれた水でも何でもいい。とにかく喉を潤したい。その一心で奈実は夏希の服をなめ始めた。回りは唖然とした。夏希は困惑している様子である。
そう、奈実はみんなにとって
麻薬に堕ちたトモダチ
だった……。
一方の彩那は取り調べを終えていた。
『では、今日は貴重なお話ありがとうございました。また何かあったら署まで連絡お願いします。』
彩那は受付でそう言われるとはい、とだけ答えて帰ろうとした。外はどしゃ降りだ。彩那はどうしようかと迷う。いや、困る。そんな様子を見た受付の女性が声をかけた。
『家まで送りましょうか?』
と。しかし、彩那は1人になりたい気分だった。雨に打たれれば頭が冷えて先が見えるはず。
そう、見えるはずだった。しかし、そうはならなかった。
濡れながら家に着くとポストに紙が入っていた。それをドアを開けながら取って、中に入った。棚からタオルを出して勢いよく頭を拭く。服も着替えたところで紙を開けた。そこには赤のボールペンで住所らしきものが書かれていた。そして、その筆跡が……
その筆跡は……
間違いなく慎太郎のものだったのである。