第二十三話 あの風景
雨が一段と激しくなった。大粒の滴が大地を濡らす。雨がパトカーを包み込んだ。ワイパーがせわしく動いている。彩那は佐藤慎太郎についての事情聴衆を受けるべき警察署に移動中だった。パトカーの窓から見る景色は……。1年前と同じだ……。
銀行強盗両親殺人事件のあの景色だ……何回経験しても慣れない……そして一生二度と忘れることのない風景だ。どんどん心臓の鼓動が早くなっているのを感じた。気が付けばパトカーは警察署の前に止まっていた。バタンと音が不意に鳴って河上祐二がぼぉーとしている彩那のドアを開けた。彩那は我に返る。今まで忘れかけていた嫌な記憶が一気に甦って彩那は話すどころではなかった。精神状態がボロボロだ。月曜日から学校どうすればよいのだろう。多分、いじめは終わるだろう。理由は簡単だ、復讐があるからである。しかし、彩那は疑問に思った。
いじめは終わる。しかしそれは復讐が怖いからであって決して改心したわけではないのだ。改心しなければ意味がないのではないか?しかし、なんと言ってもいじめがなくなるのは嬉しかった。しかし、心の支えだった慎太郎もいなくなった。本当にやっていけるだろうか?
いや、慎太郎は日本のいじめのない世界を作るための犠牲として死んだのだ。やるしかない、やらなければいけない。
私が日本の神となる!
そう心に誓って河上祐二のあとに続いて警察署に入って行ったのだった。
『臨時ニュースをお伝えします。』
何回も聞き慣れた言葉でテレビ画面が切り替わった。キャスターがグラフを見ながら話していく。
『これはここ2時間の復讐回数のグラフです。総数は2時間で確認できただけで181人です。東京都に多いですが全国にだいたい片寄ることなく散らばっています。警戒してください。』
死者は増えるばかり……