第二十二話
あの飛行機事故からたったの3時間半で犠牲者は出てしまった。
『臨時ニュースをお伝えします。今日の午前10時頃、群馬県で男子の集団がナイフで皆殺しにされました。その集団の学校の生徒に聞きますと、その集団はいじめが絶えなかったようです。そしていじめを受けていた生徒も容疑者と一致。容疑者はオレは復讐者だ、と叫んでいる模様です。本日朝に起こった飛行機ハイジャック事件に釣られたものと思われます。以上、臨時ニュースでした。』
出てしまった……
1人目の犠牲者が……
更に、その5分後のことだった。
『またもや、臨時ニュースが入ってきました。群馬県でまた復讐者と名乗るものから男女合わせて3人が鈍器のようなもので殴られ二人が死亡、1人が意識不明の重態となりました。警察は今までにいじめられていた経験があるものにしないように忠告すると共にいじめをしていた人に注意を呼び掛けています。ハイジャックのビルに警察が手薄な今、1人1人の注意が必要です。』
警察は固唾を飲むしかなかった。警察署では電話が止まらない。この10分程で対応を求められたのが26件。対応出来たのが2件。警察署に戻ったレイと蘭はこの光景に絶句した。1人目の犠牲者が出てから10分で北海道、群馬県、東京都、長野県、など計13の都道府県で復讐殺人が報道された。
『なぁ、蘭……。人って醜い生物だね。いじめと復讐の連鎖。警察は対応出来ず、一般人はそれをいいことに銀行強盗とかを繰り返す。』
蘭とレイの心は深く傷付いた。そして事件は最悪の方向へ動き出す。
『只今、入ってきたニュースです。復讐者に子供を殺された親が復讐者を殺しました。』
本当に最悪の方向へ展開されてしまった。復讐の連鎖だ。日本が今崩れようとしていた……。どこの局のテレビをつけてもニュースばかりだ。警察も対応出来ない。総理の辞任で、リーダーがいない。全てのことが悪く作用してしまった。
男は暗い部屋でテレビを見ていた。もちろんニュースが映っている。
『くっくっくっ。やはりオレの思い通りになったな。平和な日本はこれで終わりだ。オレが日本、いや世界を支配する!』
男の笑い声が部屋中に響き渡ったのだった。




