第二十一話 紙の雨
悲劇の事故から3時間後の山梨県……
地面には大量の紙。さらにまた空から降ってくる。人々はそれぞれに足を止め、紙を拾う。そこにはある1つの文章が書かれていた。
全国のいじめられている諸君。飛行機の事故に引き続いて復讐を、革命を起こせ。このままでは絶対にいじめはなくならない。それどころか増えるだろう。暴力、暴言、そしてゴミ扱いされた日々。何度死のうと思ったか、何回殴られ、何回傷つけられたか。日本、いや世界にはいじめられている人の数だけ恨みがあり、そして復讐がある。いじめられている人の心が腐ったら誰の心が腐っていないと言える!?今こそ復讐の時だ。あなたたちが復讐に成功することを心から望む
この文章は下らないとほとんどの人が捨てた。もちろん馬鹿馬鹿しくて警察も相手にすらしなかった。しかし、これが日本を大きく変えていく……
『稲垣総理、今回の事件の速報書です。』
警察官の小堂悟が言った。稲垣総理は机に座ったまま黙っている。
『い、稲垣総理?』
小堂は反応しない稲垣総理に再度呼び掛けた。すると稲垣は重い口を開けた。
『なぁ、小堂……。』
『は、はい……』
『いじめを受けたことがあるか?』
小堂は少し黙った後にない、と答えた。
『では、最近のいじめの理由は分かるか?』
小堂にはこの稲垣総理の言うことが分からなかった。
『い、いえ知りません』
稲垣は悲しみで溢れた顔になった。
『大阪市では、親がいない女子がいじめられている。』
『お、親がいないだけで!?』
小堂は驚愕した。親がいないことの何が悪いのか分からなかった。いや、むしろ友達が気遣ってあげるべきである。稲垣は続けた。
『福岡県で、自殺した子の理由はなんとなくだった。』
もう訳が分からない。本当に人なのか……なんとなくって……いじめられていた子があんまりだ。
『私がこんなこと言うのもおかしいだろうが私はいじめられていた子がする行動も話かるきがするんだ。』
『だ、だからと言ってハイジャックは犯罪ですし、飛行機の中には優しい人もいただろうと思いますが……。』
『だろうな。もし日本で革命運動が1つでも起こったら私は総理を辞めようと思っている。』
『なっ!?』
稲垣は間違いなく日本で最高の総理大臣だった。不景気からの脱退、国民のために動き、その度に成果をあげてきた。支持率は3年目にして80パーセントを越え、人望厚く、誰からも愛される存在だった。
そしてこの総理の決断により日本は少しずつ崩れ始める。そんな予感を残しながら小堂は総理の部屋を立ち去った。