第十九話 夜明け
長き夜が明けた。太陽が夜を照らし、やがて昼へと変える。
10分に1台のペースで来る消防車や、パトカー、そしてヘリコプター。
大パニックの大都会、東京都…
空は血を溢したような赤に染まっている。まるでここからが悲劇だ、とでも言っているようだ。
『こりゃ、ひでぇもんだな、蒼井……』
と、ビルの前で警察の蒼井蘭と南レイが話していた。
『あぁ、地獄だな。』
蒼井も弱々しくそびえ立つビルを見ながら答える。そこに係長がやってきた。
『あ、田中係長、おはようございます。』
最初に気付いたのは蘭だ。レイも軽く会釈する。
『あぁ、おはよう、君たちは署に戻ってくれ。犯人の可能性が高いある人物が出た。』
『本当ですか?誰なんです?』
『まだ可能性がある、という段階だが、大阪市の16歳の男性だ』
『じゅ、16歳!』
蘭とレイの声が重なった。16歳……まだ若く可能性もある年頃。そんな若い人がなぜ……
『わ、分かりました。とにかく署に戻って調べてみます』
こうして蘭とレイは背を向けて警察車両に乗り込んだ。ビルが倒壊する3時間38分前のことである……
携帯が鳴った。彩那は朝日に目を細めながらゆっくりと体を起こした。
『うぅ……』
と鳴らしながら携帯を開ける。時刻は7時半。彩那は携帯を閉じようとした。しかし、新着のメールに気付く。メールボックスを開いた。慎太郎からだった。彩那は飛び起きる。
『慎太郎からだ…』
メールを開けてみた。そこに書いてあったありがとうと言う題名のメール。
は?
私のために死ぬ?
どういうこと?
思考が一瞬停止した。それから3秒後、ベッドから飛び起きた。急いで服に着替える、いや、着替えている場合じゃない!着替えずに鍵も閉めずに家を飛び出した。
第一話 辛い日々
から
第十九話 夜明け
は、メビウスリング初心者小説掲示板に2011/06/19 20:02から2011/07/01 16:31 に投稿されたものです。