第十五話 悲劇
飛行機に乗ってから15分が経過した。飛行機は安定飛行しており、乗客の表情も明るい。
だけど……
だけど……
この笑顔が腹立つんだ!苦しんでいる人がたくさんいるのに他人事でヘラヘラ笑っている。この腐った世の中を許し、変えようとしない。隣に苦しんでいる人がいても助けようとしない。それどころかヘラヘラ笑っている。救いようのない生物だ。こんな世の中、変えてやる!慎太郎はナイフをしっかりと握って横を見た。視線に気付いた女性が
『どうかしましたか?』
と、言った。慎太郎は決心して
『少し、あなたを借ります。』
と手を引いた。そしてそのまま立ち上がり、首にナイフを当てた。
計画の実行だ
『お前ら、手を上げろ!全員だ!』
キャーと各地から悲鳴が上がった。しかし、みんなも相当焦っているらしく手を上げない。
『はやく、手を上げろって言っているんだ!』
と、怒鳴るとようやく手が上がり始めた。係員がすぐにやって来た。
『オレから3メートル以上離れろ。3メートル以内に物や人が入ってきたりしたらすぐに殺す。』
台本通りのセリフだった。ここに来る前にしっかりと考え、練習してきたのだ。
『分かりました。』
と、係員も手を上げた。
『よし、ではこちらの命令に従ってもらう』
『はい、分かりました。』
慎太郎はニヤリと微笑む。
『では、まずは男性の係員を全て飛行機から降ろせ。緊急時のパラシュートを使ってな。分かったか?』
飛行機の中が沈黙になる。
『返事は?』
と慎太郎が言えばはいと声が揃った。自分がこう言えばみんなが動く。もし、これが世界でいじめは禁止だと言えばいじめはなくなる。素晴らしい世界が出来る。思わず笑いが込み上げた。
『おい、そこのやつ』
と、言うだけで女性はビクリとした。
『今はどこを飛んでいるんだ?』
『岐阜上空です。もう少しで山梨県です』
只今、山梨県、悲劇の事故まであと15分……