第十一話 僅かな時
やがて、時計は180度動いて10時を越えた。
それまで公園のベンチで笑っていた二人は立ち上がった。
『そろそろ帰ろうか…』
と、慎太郎が立って言った。彩那も立ち上がる。
『でも、ホントにいいの?こんな時間に行ったら迷惑だよ』
と、彩那が言うと慎太郎は首を横に降った。
『いいんだって!!それよりこれが最後かもしれない…』
??
『えっ?どういう意味?』
彩那が聞き返すと慎太郎は明らかに動揺した。
『いっ、いや何でもないよ』
怪しい!!!!
『ホントに何でもないの?』
『うん』
彩那は聞きたいことがたくさんあったが、また別の機会でいいだろう
と、思った。それよりも今は慎太郎との楽しい時間にしたかった。
『そっか…ならいいや』
彩那、本当にすまない。だが、決して言えないんだ。あと、2日後に計画を実行する…こうするしかないんだ、許してくれ!!
『それよりも、今日って星たくさんあるね』
彩那のその声で慎太郎は現実に引き戻された。
急に暑さを感じる
『そうだね、綺麗だ』
慎太郎は空を見上げた。
空には数え切れない程の星。どこを見ても星だった。
慎太郎の目から涙が落ちた。
『慎太郎、どうしたの!?』
世界はこんなに綺麗なのに人間は腐ってるなんて…。
だからこそ、あの『計画』は必ず成功させないといけない、そう思った。
慎太郎は
『いや、何でもない、それより帰ろうか…』
と、涙を服の袖で拭きながら言った。
彩那にはその涙の理由が分からなかった。そして、慎太郎との時間が着実に少なくなっていっていることも…