第一話 辛い日々
また、今日も誰とも話さなかった…。16歳の川島彩那は学校の帰り道で深いため息をついた。これで2ヶ月程、誰とも話していない。
彩那に毎日襲いかかるのは『いじめ』と言う恐怖だった
きっかけは両親がいないこと。なぜそれだけでこんなに辛い思いをしなければならない?
そんな理不尽な痛みが彩那の心を少しずつ蝕んでいった。
いや、現在進行形で蝕んでいっているが正しい
彩那の通う学校は大阪第一高校
大阪五大高校の一角であり、かなり有名な国立高校だ。
一般の高校より、しっかりと設備が充実しており、お金も少なくてすんだ
しかし、綺麗なのは見た目だけだった。通う生徒も彩那の様に完璧な生徒が多い。
スポーツも勉強もセンスも良くて、おまけにルックスまで良い
そんな生徒が普通にいる。中学校の時にモテる女子第一位で、毎日告白の日々がこの高校では全く通用しなかった。
高校に入って二年生になったがこの二年間で告白された回数は二回
中学校では、入学式の日に二回すでに達成したと言うのにだ…
彩那はまだ中学の時の彼氏と付き合ってるので断ったのだが…
ここまでは、彩那の自慢話だ。つまりこれは氷山の一角に過ぎない。
そんな華やかな中学校生活とは裏腹に高校に入ってからは地獄の日々が待っていた。
悪魔が彩那に訪れたのは高1の夏だった
パン、パンと乾いた銃声が彩那を地獄に誘った。
『先日起こった銀行強盗犯が今日午後2時、一般の家に押し入り、車を貸せと要求。断った38歳の男性と、女性が銃で撃たれ死亡、犯人は逃走しましたが3時間後の午後5時程に警察に身柄を確保されました。』
と、部活の休憩中にたまたま流れていたニュースで報道された。そしてその背景には紛れもなく彩那の家が映っていた。
頭を銃で撃ち抜かれたような感触がした
それと同時に警察官が体育館のドアを開けて入ってきた。
どうにか警察官の目的が別でありますように、と精一杯祈った。
しかし、警察官の目的は間違いなく彩那だった。
『川島彩那さんですか?』
『はい……。』
と、彩那は答えるしかなかった。
『詳しくは警察署で話しますので、』
と、彩那は警察に連れていかれた。彩那は目の前の現実を見るのが精一杯で、更なる悲劇が起こるとは考えもしなかった