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親友の大聖女に裏切られた令嬢は、禁忌の書を開く

掲載日:2026/08/20

エレノア・ヴァルクレストが8歳の時、彼女は自分とセレスティアを引き裂くものなど何もないと信じていた。


家族の違いも。


大人たちも。


運命さえも。


「エレノア!待って!」


セレスティアの声がヴァルクレスト邸の庭園に響き渡った。


エレノアは庭の中央に立つ巨大な木のそばで立ち止まり、後ろを振り返った。


銀髪の少女が、つまずかないように両手でドレスを押さえながら、彼女に向かって走ってきていた。


「遅すぎるわよ!」


「ズルしたでしょ!」


「ズルなんかしてないわ。」


「私が3つ数える前に走り出したじゃない!」


「それは戦略って言うのよ。」


「それはズルよ!」


エレノアは思わず吹き出した。


セレスティアも追いつき、二人は芝生の上に転がり落ちた。


空は晴れ渡っていた。


鳥たちが歌っていた。


彼らにとって、あの日々は永遠に続くように思えた。


エレノアは、アステリア王国で最も古い貴族の一つ、ヴァルクレスト家のひとり娘だった。


セレスティアは名門の出身ではなかった。


彼女が屋敷にやってきたのは、神官たちが彼女の中に何か特別なものを発見したからだった。


何世代にもわたって見られなかったほどの聖なる力。


大人たちは常に彼女の将来について語っていた。


「選ばれし者」


「祝福されし者」


「次の大聖人」


エレノアには、なぜそれがそんなに重要なのか理解できなかった。


彼女にとって、セレスティアはただのセレスティアだった。


ニンジンが嫌いな女の子。


雷が鳴ると泣く女の子。


そして何よりも、彼女の親友。


「エレノア」


「ん?」


セレスティアは天に向かって手を上げた。


「私が大聖人になったら、王国全体を守らなきゃいけないの。」


「そう言われてるわね。」


「きっとすごく忙しくなるわ。」


「そうね。」


セレスティアは少し口を尖らせた。


「寂しくなるって言ってもいいんじゃない?」


エレノアは微笑んだ。


「ええ、寂しくなるわ。」


「すごく?」


「すごく。」


セレスティアは数秒間黙っていた。


それから小指を差し出した。


「じゃあ、約束して。」


「何?」


「私たちが大人になっても…たとえ道が分かれても…」


エレノアはセレスティアの小指に自分の小指を絡めた。


「私たちはずっと友達よ。」


セレスティアは微笑んだ。


「ずっと。」


エレノアは頷いた。


「ずっと。」


二人は当時、その言葉が数年後にどれほどの重みを持つことになるのか、知る由もなかった。


時はまさに二人が恐れていた通りになった。


二人を引き裂いたのだ。


13歳で、セレスティアはグランドテンプルに永久に迎え入れられた。


15歳で、彼女は正式に聖女として認められた。


17歳で、聖なる魔法を用いて疫病を鎮圧した後、彼女は大聖女の称号を授けられた。


19歳で、彼女の名はアステリア全土に知れ渡った。


セレスティア・アークライト、大聖女。


王国の守護者。


庶民に愛され、


貴族に尊敬され、


教会に崇敬された。


エレノアもまた変わっていた。


彼女はもはや、庭園でいたずらをしていた少女ではなかった。


彼女は歴史、政治、そして魔法に精通した、若き貴婦人となっていた。


セレスティアのような並外れた力は持っていなかったものの、エレノアには父がはるかに危険だと考えていたものがあった。


それは好奇心だった。


エレノアはあらゆることを知りたがった。


古代の文書を読み、


忘れ去られた言語を研究し、


遺跡を調査し、


教授たちが目を背けたがるような出来事について質問した。


父はいつも彼女にこう忠告した。


「忘れ去られた知識には、それなりの理由があるのだ。」


エレノアはいつも同じ答えを返した。


「それなら、誰かがそれを忘れると決めたに違いないわ。」


父は、その答えを見つけることができなかった。


それぞれの道を歩んでいたにもかかわらず、エレノアとセレスティアは手紙のやり取りを続けた。


時には数ヶ月も会えないこともあった。


しかし、会えると、ほんの数時間の間、二人は庭を駆け回る幼い頃の少女に戻った。


あの夜までは。


すべてが終わったあの夜まで。


エレノアが両親と夕食をとっていた時、誰かがドアを激しく叩いた。


3回。


父親はすぐに食器を置いた。


母親は顔色を青ざめた。


「誰か来る予定だったの?」エレノアは尋ねた。


誰も答えない。


すると声が聞こえた。


「女王陛下の命令だ!開けろ!」


エレノアは立ち上がった。


父親も立ち上がった。


しかし、彼は驚いた様子を見せなかった。


それがエレノアを最も怖がらせた。


「お父様…」


「エレノア、ついて来なさい。」


「何が起こっているの?」


「今だ。」


彼はエレノアを書斎に連れて行った。


彼は棚から数冊の本をどかし、小さな仕掛けを押した。


壁の一部が開いた。


エレノアは目を見開いた。


「何…?」


父親は小さな箱を取り出した。


「よく聞きなさい。」


ドアを叩く音がますます大きくなった。


「ヴァルクレスト卿!すぐに開けてください!」


「お父様、どうしたんですか?」


彼は箱をエレノアの手に握らせた。


「逃げなければならない。」


「逃げる?」


――屋敷の地下通路を通って。


――なぜ?


母親が駆け込んできた。


彼女は泣いていた。


――お母様…


母親は娘を抱きしめた。


――何を聞いても、戻ってはいけない。


――でも、一体何が起こっているの?!


父親はついに答えた。


――お前は反逆罪で告発されている。


エレノアは凍りついた。


――何ですって?


――お前がヴァルガン帝国に軍事情報を漏洩したと言われている。

そんな馬鹿げてる!


「わかってるわ。」


「じゃあ、証明できるわ。」


父親はゆっくりと首を横に振った。


「告発者は、誰も疑わないような人物だ。」


エレノアは背筋が凍る思いがした。


「誰?」


父親は数秒間を置いて答えた。


「偉大なる聖女だ。」


世界が止まったように感じた。


「…セレスティア。」


「ああ。」


エレノアは小さく、不安げに笑った。


「間違いに違いない。」


誰も答えない。


「セレスティアがそんなことをするはずがない。」


沈黙。


「彼女は私のことを知っている!」


母親はエレノアの手を強く握った。


「ごめんなさい。」


玄関の扉がようやく開いた。


エレノアは兵士たちが入ってくる音を聞いた。


「屋敷を捜索しろ!」


父親は通路を開けた。


「行け。」


「だめ!」


「エレノア!」


「私と一緒に来なさい!」


父親は微笑んだ。


「私たち3人が姿を消せば、お前が逃げたことがすぐにバレてしまう。」


エレノアは理解した。


「だめ…」


「時間が必要だ。」


「だめ!」


母親は最後にエレノアを抱きしめた。


「生きなさい。」


「お母さん…」


「そして真実を突き止めなさい。」


父親は秘密の扉を閉めた。


エレノアが最後に見たのは、両親の笑顔だった。


そして、そこは暗闇に包まれた。


2日後、エレノアは両親が亡くなっていることを知った。


公式発表では、ヴァルクレスト卿夫妻は逮捕に抵抗したとされていた。


エレノアはそれを信じなかった。


何時間も、彼女は古いマントを羽織り、木の下に座り、村で買った小さな新聞をじっと見つめていた。


彼女の顔が一面に載っていた。


エレノア・ヴァルクレスト:王国への反逆者。


その下には別のニュース記事があった。


偉大な聖人が告発を裏付ける。


エレノアは新聞をくしゃくしゃに丸めた。


彼女は泣かなかった。


もう十分泣いていた。


彼女は父からもらった箱を開けた。


中には黒い鍵が入っていた。


そして手紙が。


手紙にはたった一文だけ書かれていた。


「あなたが知っているすべてが嘘だと分かった時、私たちが知ることを恐れていたものを探し求めなさい。」


その下にはあるシンボルがあった。


エレノアはそれを見覚えがあった。


彼女はそのシンボルを家族の書斎で何度も目にしていた。


彼女はヴァルクレスト家の古い屋敷の廃墟へと走った。


そこで彼女は地下室を見つけた。


中央には巨大な本が置かれていた。


鎖で覆われていた。


黒色。


無題。


エレノアが鍵を近づけると、鎖が動き始めた。


カチッ。


カチッ。


カチッ。


次々と鎖が落ちていった。


エレノアは本の前に立った。


彼女は父の言葉を思い出した。


「ある知識は、ある理由があって忘れ去られたのだ。」


「ごめんなさい、お父様。」


彼女は表紙に手を置いた。


「でも、答えが欲しいの。」


彼女は本を開いた。


ページがひとりでにめくれ始めた。


何百ページ。


何千ページ。


見慣れない記号が彼女の目の前で光り輝いた。


その時、彼女の頭の中に直接響く声がした。


「認められた者。」


エレノアは後ずさりした。


「あなたは誰?」


「私には名前はない。」


「あなたは何者?」


「知識だ。」


エレノアは本を見つめた。 「セレスティアが私を裏切った理由を知りたい。」


ページが止まった。


ゆっくりと一文が現れた。


「情報不足。」


「では、どうすれば分かるのか教えて。」


次のページ。


「他人には見えないものを見る。」


エレノアは眉をひそめた。


「どうやって?」


魔法の呪文が現れた。


それは現代の呪文とは全く異なっていた。


エレノアはそれをじっと見つめた。


そして、指を二本立てた。


「オクルス・ヴェリタティス。」


彼女の目が光った。


そして、世界が変わった。


彼女は大地を流れる魔法の奔流を見ることができた。


呪文の痕跡。


目に見えない印。


秘密。


エレノアは両親の死後初めて微笑んだ。


「これが禁断の知識なのね…」


彼女は本を閉じた。


「では、真実を解き明かしましょう。」


3週間が過ぎた。


エレノアは密かに首都に戻った。


彼女は身を隠した。


調査を開始した。


文書を盗み出した。


かつての協力者たちに慎重に尋問した。


そして、奇妙な事実を発見した。


過去6ヶ月間、セレスティアの名を冠する命令が増加していた。


逮捕。


処刑。


失踪。


しかし、そこにはあるパターンがあった。


最も残酷な命令はすべて、非公開の会合の後に発令されていた。


そして、どの会合にも、同じ人物が登場していた。


若い召使い。


黒髪。


白いドレス。


腰に木の人形をぶら下げていた。


エレノアは「書物」を使った。


彼女は何かを発見した。


400年前の挿絵。


人造生物。


人間に仕えるために作られた生物。


もはや必要とされなくなった時、それは放棄された。


その名は消し去られていた。


残されたのは、その名称だけだった。


「人形」。


エレノアは心臓が激しく鼓動するのを感じた。


そして、セレスティアに会わなければならないと悟った。


その機会は、白月の儀式の最中に訪れた。


セレスティアは何千人もの人々の前に姿を現した。


美しく。


威厳に満ちていた。


全身を白くまとっていた。


人々は彼女の名を叫んだ。


「偉大なる聖女よ!


「我らを祝福したまえ!


我らの守護者よ!」


エレノアは屋上から見守っていた。


彼女はオクルス・ヴェリタティスを発動させた。


そして、彼女はそれを見た。


糸。


何千もの黒い糸がセレスティアの体をぐるりと取り囲んでいた。


それらは彼女の背中から入り込んだ。


首から。


腕から。


頭から。


エレノアは息を止めた。


「セレスティア…」


糸は彼女の背後に立つ女へと繋がっていた。


召使い。


操り人形。


その生き物はくるりと回転した。

彼女は首を傾げた。


彼女はエレノアをまっすぐに見つめた。


そして微笑んだ。


その夜、エレノアは一通の手紙を受け取った。


差出人の住所は書かれていなかった。


「友と話したければ、古代の聖域へ来なさい。」


エレノアはそれが罠だと分かっていた。


それでも彼女は行った。


セレスティアが彼女を待っていた。


「エレノア・ヴァルクレスト。」


彼女の声は冷たかった。



虚ろだった。


「あなたは王国を裏切った。」


エレノアは禁断の書を取り出した。


「そして、あなたは私の両親を殺した。」


初めて、セレスティアの目に何かが変わった。


苦痛。


ほんの一瞬。


そしてそれは消えた。


「あなたたちは共犯者だった。」


エレノアは歯を食いしばった。


「私を見て。」


セレスティアは杖を掲げた。


「降伏しなさい。」


「私を見なさい!」


沈黙。


「私はエレノア。」


セレスティアは震えた。


「私たちが競争した時にズルをした女の子。」


セレスティアの指が震え始めた。


「黙れ。」


「ニンジンが嫌いな子。」


「黙れ。」


「雷が怖い子。」


「黙れ!」


光の爆発が聖域の一部を破壊した。


エレノアは吹き飛ばされた。


彼女は激しく倒れた。



額から血が流れ落ちた。


しかし、彼女は微笑んだ。


なぜなら、彼女は彼を見たからだ。


黒い糸の一本が切れた。


「まだそこにいたのね。」


セレスティアは目を開けた。


「何…?」すると誰かが拍手をした。


パチパチ。


パチパチ。


パチパチ。


召使いが影から現れた。


「なんて美しい友情でしょう。」


エレノアはゆっくりと立ち上がった。


「人形。」


女は微笑んだ。


「そう呼んだのはあなたでしょう。」


「なぜ?」


微笑みが消えた。


「なぜ?」


エレノアは初めて、その目に真の憎しみを見た。


「あなたが私たちを創造した。」


人形は片手を上げた。


「あなたが私たちに意識を与えた。」


別の糸が現れた。


「あなたが私たちに愛を教えた。」


また別の糸が。


「服従を教えた。」


また別の糸が。


「必要とすることを教えた。」


彼女の顔は怒りで歪んだ。


「そして、私たちがもはや役に立たなくなった時、あなたは私たちを闇に突き落とした!」


聖域は無数の糸で覆われていた。


「400年。」


人形はセレスティアを見つめた。


「400年待った。」


「セレスティアはあなたに何もしていない。」


「関係ない。」


「ならば、あなたの復讐は無意味だ。」


人形は微笑んだ。


「もちろんよ。」


彼女は両腕を広げた。


「彼女は彼らの希望なの。」


彼女は都の方を見た。


「彼らの愛する聖女が罪なき者を裁くとき…」


「彼らの守護者が戦争を引き起こすとき…」


「彼らの純粋さの象徴が怪物と化すとき…」


彼女の唇に笑みが浮かんだ。


「人間は愛するものさえも信じなくなる。」


エレノアは理解した。


人形は単に王国を滅ぼしたかったわけではない。


彼女は人間同士の信頼を破壊したかったのだ。


彼女が二人の友情を破壊したのと同じように。


「さあ」と、その生き物は囁いた。「友を殺せ」


糸が引かれた。


セレスティアが攻撃した。


エレノアは禁断の書を完全に開いた。


聖域が震えた。


セレスティアは何百もの光の槍を放った。


エレノアは古代の結界を張った。


1つ。


2つ。


10つ。


ページをめくるごとに、新たな呪文が彼女に与えられた。


しかし、セレスティアは偉大なる聖女だった。


世界で最も強力な魔術師の一人。


槍がエレノアの肩を貫いた。


「ああああ!」


彼女は倒れた。


セレスティアは杖を振り上げ、とどめを刺そうとした。


エレノアは書物を見つめた。


「あの糸を断ち切らなければ」


ページがめくれ始めた。


方法あり。


「見せて!」


ページが現れた。


エレノアはそれを読んだ。


彼女の顔は青ざめた。


完全に支配を解くには、魔法の絆を内側から破壊しなければならなかった。


しかし、人形が制御できないものを使う必要があった。


共有された記憶。


エレノアは目を閉じた。


彼女はあの木を思い出した。


二人の少女。


二本の小指が絡み合っていた。


たとえ私たちの道が分かれても…


「私たちは友達よ。」


セレスティアは立ち止まった。


人形は目を開けた。


「殺せ!」


セレスティアは泣き始めた。


「エ…エレノア…」


「ここにいるわ。」


「私…」


糸が激しく引っ張られた。


「殺せ!」


エレノアは彼女に向かって走った。


セレスティアは杖を掲げた。


エレノアは止まらなかった。


その先端は彼女の心臓に突きつけられていた。


「私たちは永遠に友達でいるって約束したのに。」


セレスティアは叫んだ。


「エレノア!!」


糸が切れた。


皆が。


人形は後ずさりした。


「だめ…」


セレスティアは膝をついた。


エレノアは彼女を抱きしめた。


数秒間、二人は言葉を交わさなかった。


それからセレスティアは自分の手を見つめた。


記憶が蘇った。


非難。


逮捕。


ヴァルクレスト家。


「あなたの両親は…」


エレノアは沈黙した。


「エレノア…私…」


「分かってるわ。」


「私…」


「あなたじゃない。」


「でも、私の言葉だったのよ!」


セレスティアは泣き出した。


「王国中の人が私の言葉を信じてくれたのに!」


エレノアも泣きたかった。


彼女を抱きしめたかった。


彼女を殴りたかった。


彼女を憎みたかった。


しかし、そんな時間はなかった。


人形が叫んだ。


「人間どもめ!」


彼女の体が変形し始めた。


糸が聖域全体を埋め尽くした。


エレノアは書物を開いた。


セレスティアが彼女の傍らに立っていた。


「戦えるの?」


セレスティアは涙を拭った。


「私は偉大なる聖女だ。」


エレノアはかすかに微笑んだ。


「うぬぼれ屋め。」


セレスティアは彼女を見た。


一瞬、彼女はあの幼い少女に戻った。


「ずるい。」


二人は同時に攻撃した。


聖なる光と禁断の知識が糸にぶつかり合った。


人形が叫んだ。


「お前は私たちを見捨てた!」エレノアは答えた。


「あなたを見捨てたのは私じゃないわ!」


セレスティアは杖を上げた。


「そして、罪なき者たちの苦しみは過去を変えない!


人形は無数の糸を紡いだ。


エレノアは最後のページを開いた。


「セレスティア様。」


「何?」


「あなたの光が必要です。」


セレスティアは本に手を置いた。


何世紀もの時を経て、聖なる魔法と禁断の知識が初めて一つになった。


聖域は光に満たされた。


人形は目を開けた。


そしてエレノアは予期せぬものを見た。


恐怖。


憎しみではない。


恐怖。


一瞬、彼女は怪物を見なかった。


400年間、誰かが迎えに来るのを待ち続けた生き物を見た。


エレノアは呪文を変えた。


「何をしているの?」セレスティアが尋ねた。


「これを終わらせているのです。」


光が人形を包み込んだ。


しかし、それは人形を破壊しなかった。


糸が消えた。


生き物は地面に倒れた。


「なぜ…?」


エレノアが近づいた。


「誰かがこの鎖を断ち切らなければならないから。」


操り人形は泣き始めた。


おそらく4世紀ぶりに。


数ヶ月後、アステリア王国は真実を知った。


文書が公開された。


操られていた者たちは解放された。


ヴァルクレスト家の名誉は回復された。


しかし、どんな真実も死者を蘇らせることはできない。


エレノアは両親の墓を訪れた。


彼女は二輪の花を供えた。


「分かったわ。」


風が彼女の髪を優しく揺らした。


「真実を見つけたの。」


背後から足音が聞こえた。


セレスティアだった。


彼女はもう優雅な儀式用のローブを身に着けていなかった。


「近づいてもよろしいでしょうか?」


エレノアはためらいながら答えた。


「ええ。」


セレスティアは花を二輪残した。


「ごめんなさい。」


エレノアは目を閉じた。


「分かってる。」


「許してくれるとは思ってないわ。」


「それも分かってる。」


セレスティアは視線を落とした。


「あの夜、私たちの約束は消えてしまったのかもしれない。」


エレノアはセレスティアを見つめた。


二人の少女が走っている姿を思い出した。


一人はズルをしていた。


もう一人は抗議していた。


彼女は失ったもの全てを思い出した。


両親。


家。


かつての生活。


癒えることのない傷もある。


しかし、エレノアは禁断の書から何かを学んでいた。


過去を知ることは、それを繰り返さなければならないという意味ではない。


彼女は小指を差し出した。


セレスティアはゆっくりと視線を上げた。


「私たちはあの頃の少女には戻れない。」


セレスティアの目に涙があふれた。


エレノアは続けた。


「でも、これから私たちは、自分たちの未来を見つけることができるわ。」


セレスティアは手を差し出した。


二人の指が絡み合った。


今度は、永遠に一緒にいるとは約束しなかった。


約束など必要なかった。


二人は墓地の出口へと歩みを進めた。


少し離れたところに、小さな木像が木の下で二人を待っていた。


人形は空を見上げていた。


彼女はまだ人間を理解できなかった。


おそらく、彼女は決して人間を完全に理解することはできないだろう。


しかし、400年ぶりに…


誰かが彼女のもとに戻ってきた。


そして、幼い頃のあの午後以来初めて、エレノアはあることを理解した。


人間が禁断と呼ぶ知識がある。それは世界を滅ぼす力を持っているからだ。


しかし、誰も受け入れたくない真実と向き合わざるを得ないからこそ、禁じられている知識もあるのだ。


エレノアはそれらの本のうちの一冊を腕に抱えていた。


セレスティアは彼女の傍らを歩いていた。


そして、二人の前には、起こったすべての出来事の責任をまだ負わなければならない世界が広がっていた。


エレノアは微笑んだ。


逃亡者としての彼女の物語は終わった。


しかし、二人の友人の物語は…


まさに今、再び始まったばかりだった。

この物語を楽しんでいただけたなら、ぜひご感想をお聞かせください。


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