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中二病の地球防衛論~最強チートは雑草だった~  作者: とまCo
第1章 揺らぎの始まり

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12/18

11 揺らぎの夜

 12月最後の登校日。


 朝の空気は冷たいけれど、

 ここ最近はずっと穏やかで気持ちが良い。


 胸の奥の温かさも、

 日常の中に自然に馴染んでいた。


 * * *


 学校は、いつもより少し明るかった。


 授業は短縮で、

 みんながどこか浮ついている。


「なあ誠、また来年な!」


 悠斗が手を振ってくる。


「うん。また来年」


「おれさ、冬休み中にPC買ってもらえるかも。

 親が“そろそろ必要だろ”って言っててさ」


「よかったじゃん!!!」


 自分でも驚くほど明るい声が出た。


「誠もさ、せっかくなんだから何かつくれよ!

 冬休み中にさ!」


「……まあ、うん」


 悠斗は笑って走っていった。


 その“普通さ”が、

 胸に静かに染みた。


 胸の奥の温かさも、

 ナノンの声も、

 静かに続いていた。


 * * *


 冬休みに入ってからは、

 気づけば一日がゆっくり溶けていくようだった。


 夕飯は、家族全員そろっていた。


 父さんはノートPCを閉じながら、

 「今日の会議、やっと終わった……」と伸びをした。


「お父さん、今日も通信変だったの?」

 母さんが味噌汁をよそいながら聞く。


「うん、なんか波みたいに揺れててさ。

 でもまあ、仕事には支障ないから大丈夫」


 父さんは笑ってみせたけれど、

 その声には少しだけ疲れが混じっていた。


 妹はケーキの話で盛り上がっていて、

 母さんは明日の買い物リストを考えている。


 全部が、

 “普通の家の夜”の音だった。


 僕も、何も考えずに、

 ただその空気に浸っていた。


 * * *


 食器を片づけて、

 自分の部屋に戻る。


 その瞬間――


 胸の奥が、

 きゅっと縮んだ。


(……え……?)


 ここ最近まったく感じなかった“重さ”が戻ってくる。


 空気が、

 ゆっくりと沈んでいく。


 窓の外の風が、

 急に強く吹きつけた。


 机の上のコピオが、

 小さく震えるように光った。


『誠さん。

 環境データに急激な変動を検知しました』


「変動……?」


『気圧が局所的に低下しています。

 湿度も急上昇……これは……』


 コピオの声がわずかに揺れた。


 胸の奥が、

 痛む。


(……ナノン……?)


 名前を思い浮かべた瞬間――


《……マ……コ……》


 声が、弱かった。


 ここ最近ずっと嬉しそうだった声が、

 かすれて、

 途切れそうで。


「……ナノン……?」


《……マ……コ……

 ……むり……

 ……たえ……られ……ない……》


 胸の奥が、

 ぎゅっと締めつけられた。


 空気が重い。

 部屋の温度が下がる。


『誠さん、揺らぎの強度が急低下しています。

 このままだと……“消失”の可能性があります』


 コピオの言葉が、

 胸に突き刺さる。


(……消える……?)


 そんなはずはない。

 ここ最近はずっと安定していたのに。


 でも――

 胸の奥は、

 はっきりと“不均衡”を感じていた。


 あの場所へ、

 引っ張られるような感覚。


 * * *


 その夜は、

 ほとんど眠れなかった。


 胸の奥のざわつきが、

 ずっと続いていた。


 ナノンの声は、

 もう聞こえない。


 でも、

 “消えかけている”気配だけが残っている。


 布団の中で目を閉じても、

 胸の奥があの場所へ引っ張られる。


(……行かないと……)


 理由なんて分からない。

 でも、分かる。


 行かないと、

 ナノンが――

 “消える”。


 胸の奥が、

 はっきりとそう告げていた。


 * * *


 翌朝。

 まだ外が薄暗い時間。


 目が覚めた瞬間、

 身体が勝手に起き上がった。


 胸の奥のざわつきは、

 夜よりも強くなっていた。


(……もう、待てない……)


 コートを羽織り、

 靴を履く。


 家族はまだ寝ている。


 玄関のドアを静かに開けると、

 冬の冷たい空気が流れ込んだ。


 でも胸の奥だけは、

 熱くて、痛かった。


(……ナノン……)


 名前を思い浮かべると、

 胸の奥が震えた。


 その震えが、

 はっきりと“あの場所”を指していた。


 僕は、

 まだ夜の名残が残る道へ踏み出した。


 呼ばれる方へ。

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