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幹部たち

 静かな会議室に何人かの代表が集まっている。集まっているのは、各騎士団長、魔王補佐ワーシロップ、そして俺――魔王アークルーズ。

今日の議題は、もちろん“あの炎龍の件”だ。


机の上に、アルトラの国旗が刻まれた宝石を放り投げる。


「この前、倒した死霊術をかけられた炎龍の中にあったものなんだけど。実際に、戦った個体の骨にも勇者の紋様が刻まれてたんだよね。」


 彼らはもちろん驚いている。当たり前だ、勇者は大体五百年に一度程度の頻度で現れる。前の勇者が攻め込んできたから、まだ百年も経っていない。


「陛下、それはどういうことですか? それに勇者が死霊術(ネクロマンス)など……。あるわけないじゃないですかっ!」


 第一騎士団長 ユーラがいった。彼女も驚くはずだ。勇者達の能力は神聖術と言われるもので、死霊術とは対になるものである。それを、勇者が使ったとなれば、勇者の中に偽物がおり勇者を名乗る別の人間が行った行動によるものだと考えられるのだ。


「まさか、陛下は久しぶりの外出に大変、心を痛められたと? この私が、動かなかったばかりに誠に不甲斐ない。」


 彼女はそのことを言うとドンっと、頭を強く床に打ちつけた。そう、見事な土下座である。いや、俺の話信用されてない? ここまで信頼度がなかったとは……。


「いや、いや。俺は心痛めてないよ。いくら、引きこもりでもそこまで痛めてないから。だから、頭を上げて。ね?」


 実際彼女は二十分ほど頭を床につけていたが、なんとか頭を上げ、席に付かせることに成功した。


「それで、本題に戻るけど。」


 咳払いをして、話を戻す。


「この紋様が浮き出ているってことは、勇者達の中に偽物がいる。と考えられると思うんだけど。でも、まだ勇者が出てくるには時期が早すぎる。だから、……」


「結局、アークちゃんはどう考えてるの?」


 話を無理やり断ち切ったのは第二騎士団長 ノヴァ。彼女は親しげに俺に話しかけてくる珍しい人物の一人である。


「人間界に誰か手配して、偵察してきてほしいと思っている。」


 このことについては、反論が出るのは当たり前。危険すぎるのは百も承知。


部下にはやらせたくないが、魔王という立場の上はこの作戦には参加できない。護衛がいなくて、死にました。なんてことがあり得てしまうからだ。


 しかし、人間とは違い大きなツノ、尻尾がある部下がほとんどである。人間に近い見た目をしているのは俺とワーシロップだけだ。


「それなら、やっぱアーク様が……。」


「それじゃ! 私ちゃんがやってあげますよ。任せてっ! アークちゃん。」


 ワーシロップの言葉を聞かず、ノヴァは言ってみせた。彼女はニコニコと大きく手を挙げたまま続ける。


「私と、第二騎士団の優秀な人材3人で、人間界に行ってくるよ。アークちゃんは最近忙しいだろうし、ゆっくり休んでて。」


「大丈夫なのか? だって、この作戦には……。」


(危険が伴う)その言葉を言うことができなかった。


「大丈夫だってー。この中で一番ツノとか尻尾とか、魔族特有の身体を隠す魔術得意なの私だし。まぁ、アークちゃんは、不必要だろうけどー。まぁ、今日はこれで解散っ!」


 彼女は、それで会議を締めくくり忙しそうに出ていった。ワーシロップが慌てて後を追いかける。会議室の中にはまるで、嵐がさったような静かさだけが残されていた。しかし、その静寂を切り裂いたのは、意外にも無口な第三騎士団長 ダラーカラだった。


 彼は一つの封筒を俺に渡してきた。


「なんだ? ダラーのラブレターっ?」


 少しふざけてみるが反応がない。そういえば残った二人、冗談が通じないんだった。ゆっくりとその封筒の封を開く。中には、一枚の招待状。『新魔王就任パーティ』のものだった。


 ✴︎✴︎✴︎


「ノヴァっ!どういうつもりですか?」


 彼女はどうやら私の後をついてきたらしい。どういうつもりでもないのに。


「どうしたの? シロップちゃん。ただ立候補しただけじゃん。」


「それだけじゃないでしょう? 最近、あなたには怪しい行動が目立つようになっている。勝手に城の資料室へ入っていくつかの資料を勝手に持ち出したという報告も。なんのつもりなですか?」


「ねぇ、ねぇ。シロップちゃんはさ、アークと魔王様血が繋がってると思う?」


「魔王様って、前魔王のことですか?」


 猫をかぶるのをやめることにする。だって、ここで、隠しても意味がない。どうせ、彼女にはたぶんすべて筒抜けだから。


「私ちゃんさ、ずっと考えてたの。アークとさ、魔王座似てないなーって。だから、資料室で探してたの。歴代の魔王様の写真。」


 スカートのポケットから勝手に持ち出した写真を取り出す。そこには巨大な羽を持っていたり、クチバシを持った力強い人々が、笑顔で映されている。


「やっぱさ、似てないんだよね。ハルピュイア家って、鳥に似た作りを持った魔族のはずなの。魔王様だって、大きな黒い翼を持ってた。だけど、アークにはない。」


「たまたまでしょう。そこまで気にする必要のあることではありません。」


「でも、気になるんだよ。元人間のシロップちゃんにはわからないかもだけど。」


彼女は不快そうに私をみる。その目はまるで、こちらの首を掻き切ろうとする獣そのものだ。


「だからさっ。調べに行くんだよ、人間界に。ちょうど行きたかったから、今回のアクシデントは本当に運が良かったー。」


空は暗く淀んでいた。まるで、私が悪の裏切り者ということを祝福するように。私は、その淀んだ空にと近くの窓を大きく開けて外へ飛び込んす。きっと、ワーシロップは追っては来れない。彼女に翼はないのだから。


「待ちなさいっ! ノヴァ!」


 彼女の声がだんだんと小さくなる。ごめんね、大好きな仲間たち。でも、気になることは調べたい。大好きな魔王様の死因も。


 全てが明らかにならないと私は、アークちゃんを信じられるないから。だから、一回だけ、少しだけ第二騎士団長としての肩書きを捨てることを許してくれるよね?


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