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死霊術

 死霊術(ネクロマンス)。これは、かつて神が起こした奇跡または、悲劇。この世には無くなってしまった命を再び甦らせるもの。


 しかし、その代償は大きく蘇ったものに自我なんてものはない。それはまさにただ暴れ回り、全てを破壊する終末兵器である。


 そんな相手に敵うはずがない。集中し、魔術で火球を作り飛ばす。先ほどの炎龍とは段違いに大きな爆発が起きる。


(倒したか?)


しかし、戦闘中にそんな淡い期待は厳禁だ。炎の中から、また点々とした影が出てくる。


(この骨どうなっているんだよ。)


術者(ネクロマンサー)は、どこだ? 普通、死霊術は人間の術師がいないと使えない禁忌魔術の一つ。そう簡単に使えるわけがない。実際に、蘇っているのは初めに倒した一体だけ。しかし、その一体だけでもこのありさま。


 実際、この骨に攻撃が与えられないなれば、術者を叩くのが一番だ。だが、この辺りには人の気配がない。考えられるのは、遠距離からこちらの様子を伺っているという場合。その場合、魔力消費が激しくなるので、相手の魔力が底を尽きるまでの耐久戦になる。


 その時だった、炎龍がこちらに突っ込んでくる。急いで鎌で塞ぐ。目を開けると、目の前には不可思議な紋様。ちょうど肋骨にあたる骨で、どこかで見たことがあるようなもの剣と天使をモチーフにしたものである。


 そして、それは勇者の紋様だった。


なぜ? その言葉だけが頭をよぎる。しかし、気を抜いてしまった。また、大きく吹っ飛ばされる。


こっちは、耐久戦は得意としない。理由は小さい体格上、それほど持久力がないからだ。特に俺は毎日引きこもりのインドアのため、歴代の中でも体力はない。


 しかし、相手は勇者ときた。相手の勇者も、もしかしたらインドアな人間なのか?。わざわざ戦場に出向かず、炎龍という魔獣を使い魔王を誘き出す。そして、一度と会わないまま倒そうとするなんて。


 ふざけないでもらいたい。しかし、こちらには攻撃手段はない。実際には、あるのだがあまり使いたくない手である。


『ワーシロップを呼ぶか?』 ワガママな考えが頭をよぎる。だが、よく考えてみるとワーシロップを巻き込みたくはない。俺の唯一の家族なのだから。傷つけたくはないのだ。


 それに、相手の目的がワーシロップの場合もある。彼女と勇者は切っても切り離せない関係なのだから。


 迷っている暇はない。最終手段を使う。


 ✴︎✴︎✴︎


 先ほども試した通り死霊術には、通常の魔術は通用しない。だが、しかしただ一つの魔術は通じるのだ。神聖魔法と呼ばれる魔術は。


 本来は、人間が使うものであり、一般人なら小さな光源を作り出す程度。使いこなせたものでも、光の大きさをカボチャくらいの大きさにするのが限界だと呼ばれている、いわゆる使い所のない魔術。しかし、こんな魔術でも効果は最強と恐れられるほどである。


 なぜか?


【どんな魔術でも打ち消せる】


 という効果だからだ。


 通常は魔獣が襲ってきた時に使い、見せることで追い払うことを目的とする。しかし、この魔術は光だけしか出せないのか? (いな)、そうではない。こんな魔術でも極める暇人はいるのだ。


 それが第六魔界魔王 アークルーズ・ハルピュイアだっただけ。もし、この死霊術師が別の場所に炎龍を送っていれば、この出来事は歴史に刻まれるほどの大ごとになっていたかもしれない。


 ✴︎✴︎✴︎


 瓦礫の下に隠れて一度体制を整える。鎌は入れてきた袋に入れ傷がつかないようにしておく。(一応、家宝だしな)事実を言ってしまえば、実践でこの魔術を使うのは初めてだ。今まで、使うことはあっても、停電の時の電気の代替えとして使うなんてことが大半だった。


 だから、魔術は嫌いだ。ただでさえ、苦手な集中力と想像力を必要とし、使いこなすにはしっかりとした勉学も必要となる。彼が嫌いなことがすべて揃っているのだ。


 だが、逆に言えばだからこそ彼は誰でも使えるような初歩的な魔法を極めたのかもしれない。


 相手は動く的だ。集中しろ、あの龍に突き刺さるような形を。どれだけのパワーを使っても折らない不屈の剣を。


 彼が念じると同時に光が彼の身長よりも一本の大きい剣の形に集まっていく。夕暮れ時とは思えないほどの、光が当たりを満たした。そして、その光の密度が十分に達したとき、その剣は音もなく飛び、龍を切り裂いた。なんの音も立てず、綺麗に切り裂いた剣は綺麗な光を出し、消えていく。


 これが、世界で初めて行われた正しい神聖魔法の使い方である。


 龍は、初めこそ再生しようと抵抗したものの次第に灰へと還っていった。その様子はあまりにも綺麗で、まさに神による浄化行われたようだった。


「これで、終わったー。思ってた以上に疲れるものだな。」


そうやって、しっかりと倒せたか、確認するため灰の山に近づいたのだが、身体は限界だったようだ。灰の山に倒れしまう。すぐに起きあがろうと、手をついた時、灰の中に固いものがある。手を入れ、中から取り出してみると宝石のようなものだ。


(なんだ?これ。)


 そこには、人間の国の国旗が刻まれている。その国の名前は、【神聖国家アルトラ】。代々、勇者を選出し、魔界の魔王たちと争ってきた国の名である。


 一応、証拠としてこの玉を胸元にいれ、湖に戻ることにした。ここには、もう何もない。これから、大変になりそうだ。建物を建て直さなければならない。そして、今回の件が繰り返さないように、この辺りの防御結界も強めてもらわなくてはならない。


 また、仕事がどんどん溜まっていく。それと同時に布団から遠ざかっていく。

(やっぱり、魔王やめようかな。)



「おかえりなさい。アーク様。」


 帰り道、湖よりもだいぶ前の道に彼女は立っていた。


「ご無事でなりよりです。」


 彼は少し笑ってみせる。いや、まだ魔王はやめられない。だって、俺には世界一の味方がいるのだから。こんな引きこもりで、チビで、体力もないインドアな魔王だけど、こんな俺を魔王と認めてくれる人がいるのだから。


「当たり前だろ。だって、俺は魔王様なんだから。この魔界の中で一番偉いんだぞっ!」


 軽く彼女の肩をつつくと、二人は楽しげに歩き始めた。


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