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好きな人が、異形に護られている。

作者: けむりぬ

お久しぶりの新作です。


「三年間、ずっと兎束河(とつが)さんのことが好きで、今も好きです!

兎束河さんには、ずっと傍で笑っていてほしい! だから、僕と……付き合ってください!!!」

「……」


 一年間お世話になった教室は、卒業式後に、みんなで別れを惜しんでいた賑やかさが嘘のように静まり返っている。


 心臓がドッグンドッグンと、一回一回強く鼓動しているのが胸に伝わっていて、耳にまで心臓の鼓動が聞こえて、体は小刻みに震え、顔は茹で上がっているんじゃないかと思うほど熱い。



 学校の教室で、卒業前に彼女へ告白をしてしまった。

彼女が1人教室に戻っていく姿を発見した僕は、最後に彼女と一言でもいいから話したいと思って、彼女についてきてしまったのだ。


 当初は告白はせず、片思いで済ませようと思っていた。

本当に、大学に行っても頑張ってねとだけ、伝えようとしていたんだ。


 でも、振り返った彼女の顔を見て、僕の理性が一瞬で吹っ飛んだ。

誰かに助けを求めているような、涙を溜めた銀色の瞳を見つめていたら、気が付いたら告白してたんだよ……。


 好きな人が泣きそうになっているのに、場違いかもしれない。

でも、今の僕はただのクラスメイトなだけで、兎束河さんを本当の意味で慰めることはできないと思うんだ。僕は同情をしたいのではなく、彼女には心から笑っていて欲しい。


 人は1人では生きていけないと誰かが言った。

なら、僕は彼女を支えるために生きていきたいと本気で思っている。


「……」

「……」


 兎束河さんからの言葉を待っているけど、一向に返事はもらえない。


 ああ、終わった。

でも、それはそうだよね。奇跡的に高1、高3の二年間同じ教室だったにも関わらず、ほとんど関わらなかった僕がいけないんだから。


 最後にもう一度、彼女の笑った顔が見たくて、挨拶だけしようと思っていたんだ。


 それなのに……どうして、僕ってやつは……。


 急に告白しても、卒業記念の告白だと思われても仕方がないよな……。

そんな軽い気持ちで告白をしたわけじゃないけど、そう思われても仕方のない展開だ。


 先ほどまでの緊張が吹き飛び、今では嫌な汗が体から溢れて、制服の中が気持ち悪い。


 いっそのこと、早く刑を下してほしいです、はい。



「ねえ、透適(とうてき)君」



 突然名字を呼ばれて、僕は思わず背筋をピンと伸ばしてピタッと気を付けの姿勢をとる。


 


「は、はい」


 ようやく喋りかけてくれた彼女の声は、いつ聞いても耳が癒される風鈴のような聞き心地だ。

感情をあまり声に乗せないのか、抑揚は少ないけど、怒っているような声色ではない。


 しかし、そんなことを分かっていても、僕の声は震えて上擦っているわけだけど……。


「私の顔を、目を見てもう一度告白して」

「え」


 僕は彼女の言葉に、耳を疑い目を開けて、彼女を見た。

銀色の長い髪が、風に靡かれてサラサラと宙を泳いでいる。彼女は、髪を片手で抑えながら、僕をまっすぐ見つめてくる。


 彼女の顔には揶揄って、遊んでやるという魂胆はなく、本当にもう一度告白をしてほしそうな、真剣な瞳で僕を見てくれていた。


「その気持ちが嘘じゃないって証明してよ」


 この気持ちに嘘はない。

陰キャ人生だった僕を、清潔感のある普通の男に変えてくれたのは彼女だ。


 彼女に褒められたくて、認めてもらいたくて、僕は自分を変えることができたのだから。

ボサボサだった不潔な髪を、短く清潔にして、眉毛も綺麗にして、早寝早起きを心がけて、朝夜のスキンケアを欠かさないようにして、筋トレまでするくらいには、彼女に良く思われようと必死だった。


 でも、最初は髪をワックスで整えることも、眉毛を整えることも、失敗して、クラスメイトに笑われた。正直、死にたくなるくらい後悔したし、やっぱり止めようとも思ったけど、兎束河さんが僕の変わろうとする姿勢を褒めてくれたから、今まで続けることができたんだ。


 この思いが、どうか伝わってほしい。


 震える手をどうにか押さえつけるように、手汗の出ている手で制服の袖をギュッと掴んで、今度は彼女の目を見て告げる。


「僕は、兎束河さんが好きです。

一度、兎束河さんの笑う姿を見てから、一目惚れしました。

努力をしている姿も、友達には甘くて自分には厳しいところも、動物に優しいことも、子供や老人に親切なところも、素敵です。


だけど、1人でいるときは少し寂しそうな姿を見かけて、もっと笑っていてほしいと思ったんです。


どうか、僕と付き合ってください。貴女の笑顔を、最前席で見ていたいんです。

僕を励ましてくれたように、今度は僕が貴女を支えたいんです」


 普段聞いてるロックバンドの歌詞かよと突っ込みたくなるような、詩人めいた言葉がすらすら出てきたことに、僕はもう一度顔が熱くなった。


 でも、決して目はそらさずに、彼女の輝く銀色の瞳を見続ける。

兎束河さんは、一度目を瞑って、もう一度目を開いた。


 眉を下げて、目を細め、口を閉じた状態で少しだけ口角を上げている兎束河さんの顔は、全てを諦めていたような表情を見せる。


「その言葉が本当なら、嬉しい。

ねえ、例えどんなことがあっても、私のそばにいてくれる?」

「も、もちろんです! この気持ちに嘘はないです!」


 僕は彼女と言葉が被らないように即座に答えた。


 本当に、この気持ちに嘘はないんだ。


 兎束河さんは、片腕を掴んでから目を逸らして、もう一度僕を見た。


「なら……見せてあげる。

私と付き合うということが、どういうことになるのか」


 僕に近づいてくる兎束河さん。

彼女との距離が近くなり、女子特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。


 匂いを嗅ぐなんて失礼なことをしたくなくて、というよりも、気持悪いと思われたくなくて、呼吸を少し浅くしてしまう。少し息苦しいのに、胸のときめく音が耳に聞こえてきて煩わしく思う。


「手、出して?」

「う、うん」


 手汗を拭く前に、彼女に手を握られる。

柔らかい小さな手に触れて、僕はなぜか彼女と手を握れた喜びよりも、彼女の手が震えてることに目がいった。


 彼女の顔を見れば、眉と目、口角が少し下がっていて、どうせ分かってもらえない、期待をしてはいけないような目で、僕を見ていることが分かった。



「私と付き合うってことは、こういうことなの」

「え?」


 彼女がそういうと、彼女の後ろから大きな白い靄が現れる。

靄の大きさは、教室の床から天井まで大きく伸びていて、彼女が3人ほど入れそうなほど横にも広がっていく。


 白い靄が人の様な形を取り始めて、巨大な人骨ができあがろうとしている。


 それを見た僕は思わず彼女を抱き寄せて、彼女を守るよう後ろに下がらせた。


「こ、これは」

「大丈夫……私を害する気持ちがないなら、襲ってこないから」

 

 この存在を彼女は受け入れているようだった。でも、それにしては声が小さく自信がなさそうだ。


 彼女の言葉を信じるなら、これはこの姿で彼女を護っていることになる。

学生とは思えないほど大人な雰囲気で、常に何かを諦めているような表情をしていた兎束河さんの顔が思い浮かんだ。


 彼女に告白すると、呪われるって噂が、流れていたことを思い出す。

彼女の友達は、兎束河さんに振られた腹いせに噂を広めた馬鹿がいると大声を上げて怒っていた。


 そういえば、その時からだ。

高校一年の夏休み直前、彼女がクラスメイトの男子に声をかけなくなって、表情が少しだけ暗くなったのは。


 呪われると噂された原因は、きっとこの宙に浮いてる存在を見たからだ。


「……」


 宙に浮く存在は、なにも言葉を発することはなく、ただただ浮いている。

静かだった教室に、モスキートンのような耳をつんざく音が幾つも聞こえてくるし、教室がほんのり肌寒くなった気もする。


 それは、体のほとんどが骨で、右腕だけ大きくて長い鎖がふよふよとついていて、背中には全身を覆うほどの白いマントを身に着けている。


  頭と思われる場所には、人間3人の頭蓋骨と、一匹の動物の頭蓋骨がぐるぐる回っている。

一つの頭蓋骨は、片側の頭と目を包帯で巻かれていて、左目には人間の目が炎に包まれていて、僕を凝視している気がした。


 首にはペット用の首輪とリードが装着されている。


 右腕の役割を果たしている長すぎる鎖の先端に五本の短剣が手の代わりになっていて、左腕には、僕よりも少しだけ大きい包丁が握られている。僕の身長は177だから、包丁の大きさは180センチくらいだろうか。


 肋骨には、黒い球体に巨大な針を刺した心臓っぽいものがある。

骨盤は、車のナンバープレートのようなものが、数個ほど釘と一緒に固定されていた。


 足には小さいタイヤが装着されて回っているが、宙に浮いているので機能していないが、凄まじいスピードで回り続けてるけど、タイヤの擦れる音は聞こえない。


「怖いでしょ? 私と付き合うと、彼らも憑いてくる。

私を傷つけることをしようとすると、あなたに悪意が降ってくるの、透適君。


私に告白すると呪われるっていうのも、あながち嘘じゃないのよ……」


 後ろから聞こえてくる声は、はなから何の期待もしていない感情の籠っていない声。

ただ、なんとなく、それでも受け入れて欲しいという願いの様な、何かを彼女から感じ取った。


「そう、なんだね」 



 なぜだろう。

僕は家に出る黒かったり赤かったりする素早いアイツのことは鳥肌が立って足がすくむほど嫌だし、ホラー映画も薄目で見るくらいのビビりなくせに、目のまえの存在には、そういう嫌悪感とか、恐怖感を感じない。


 明らかにこの世のものではない存在を見て、自分の感情が壊れたのだろうか?

いや、そうじゃない気もする。だって、彼女に触れている手や、体のことを思うだけで、またしても体感温度が上がるんだから。


 

 でも、不思議と、僕は目の前の異形を見ても、告白してる時より手は震えないし、心臓の鼓動もいつも通りで、息も荒くなったりしない。



 いたって普通に、その異形をじーっと見てしまう。


(娘を、我が子を、姉ちゃんを、イモウトヲ……護らないと)


 そんな願いの様な言葉が、頭の中に響いているからなのかもしれない。


「少し、待ってて」

「え、ちょっと」


 その存在の前に、僕は歩いて向かう。

近づけば近づくほど、顔を見るには上を見上げないといけないし、ジャラジャラと鎖の音が耳に入るし、隣を見れば巨大包丁と短剣がキラキラ光ってる。


 ちょっと近づいただけで、冷凍庫に入れられたような肺まで凍りそうな冷たすぎる寒さに襲われてる。


 言葉は聞こえてきたけど、僕のことをかなり警戒している様子。

まあ、何となく、そんな気がするだけで、実際は違うかもしれないけど。


「娘を傷つけたら、殺してやる」

「我が子を泣かせたら、殺してやる」

「姉ちゃんを悲しませたら、殺してやる」

「イモウトヲゼツボウサセタラ、コロシテヤル」


 この人たちは、兎束河さんを傷つけたら、その人物を殺してしまうみたいだ。


 かなり難しい条件ではある。

だって、人は傷ついて成長していくものだから。


 絶対に傷つけないということは約束できない。


「それは、約束できかねます」

「ならいまここで、存在を消す、消滅せよ、姉ちゃんから離れろ、ガアア!!」


 動物の頭蓋骨が飛び出してきて、僕の左腕に噛みついてくる。

短剣は右腕に突き刺さり、包丁で上半身と下半身が真っ二つにされて、足から放たれた小さなタイヤが巨大化し、吹き飛んだ上半身が轢かれて、僕の視線が一気に低くなった。

 

 痛みは不思議と感じない。


 頭と胴と足が目の前に落ちてるのに、僕はなぜだか何も感じない。

もう、死んでしまったのかと思うけど、死んだとは思えないんだ。試しに、いつも通り手足を動かせば、手と足がバタつくし、浴衣の硬さや、冷たさも感じ取った。

 

 今の僕はそういう幻覚を見せられているのかもしれない。

実際に彼女を傷つけたら、こういう状況が待っていると警告しているのか。

 

 そう考えると、頭が急に熱くなって、さらに大きく見える異形を睨んで歯を食いしばった。


「アンタたちは、一生こんな間違った方法で彼女を守り続けていくつもりか?」

「なに、なんだ、どういうことだ、グルルルル!!」


 本当に分かっていないのだろう。

動物の頭蓋骨が僕の腕を噛みちぎり、僕の目の前まで迫ってきて口を開けてきた。


 しかし、鋭く針のように尖った牙は、僕に届く前に動かなくなる。


 このチャンスを逃がしたら、彼らは僕の話なんか聞かずに、一生彼女の邪魔をすると直感で分かってしまう。


 僕は思い切り空気を吸って叫んだ。


「大切な人を護るのはいいけど、これじゃあ彼女を一生孤独にしてしまうんだ!」

「そんなことない、そんなわけない、嘘だ、……」


 僕の言葉に反応して、やつらは後ずさる。


 ああ、本当にわかってないのか。

遠くに吹き飛んで潰された腹を見ながら、腹の底が熱く渦巻いていくのを感じる。


 人を怒っても碌なことがないから怒りもしないし、人に対して強く当たれば蔑んだ目で見られるのが、ここ最近の世の中なんだけど。


 僕はそうなってもいいから、怒鳴ってやりたい気分だった。


「どうしてわからないんだよ! 人は独りじゃ生きていくのは難しいんだ!

あんたらの過保護さが彼女を独りにしてる!!! 

もし今頃、アンタらが邪魔しなかったら、彼女は誰かの隣で笑ってたかもしれないんだぞ!!


人は傷ついて成長するのに、それを邪魔してるのはアンタらだ!

アンタらが、彼女に近寄せちゃいけない人物は、彼女を危険な目に合わせよとしてる頭のおかしい連中だけで、一般の学生を脅す真似をして、彼女を独りにさせるのは間違ってるんだ!」

「……」


 急に視点がぐるりと回って、少しだけ目を回した時と似た気持悪さに襲われる。

手で頭を抑えて、目を開けると、いつも通りの視線に戻っていた。ということは、いつもの僕に戻ったはずだ。 


 どうやら、僕の体を元に戻してくれたみたいだね。


 さて、兎束河さんの家族に対して、思いっきり心の底から怒鳴ってしまったわけだけど、ここから信用を回復するにはどうするべきか…。


「どうすれば、僕を信用してくれますか?」


 結局、聞いたほうが早いと思って、僕は彼女の家族に思い切って聞いてみた。


(娘を、我が子を、姉ちゃんを、妹を……、独りにしないで……それだけでいい)


 やり方は間違えていたけど、異形は本当に兎束河さんが大切で、どうしても守ってあげたかったんだろう。


 恋は人を傷つけるけど、成長もさせる。

それすらさせてあげないのは、歪な愛情だと思う。 


 異形の伝えてきた、兎束河さんを独りにしないという言葉なら、約束できる。


「分かりました、約束します。絶対に独りにはさせません。

ただ、彼女が別れたいと言えば、大人しく身を引きます。彼女の気持ちが離れてしまっても、それは僕の責任です。別れた後で、彼女が傷つき、孤独になってしまった場合でも、この命を好きにしてくれて構いませんよ」


(分かったわ、分かった、分かったよ、ワカッタ……約束、頼む)


 僕の目の前でそういっていたのは、骸骨の様な異形の姿ではなく、兎束河家の皆さんであろう、人たちだった。


 両親、弟、犬の3人と1匹は、頭を下げている。


 僕もそれに応じて、頭を下げた。


「透適君!? どこにいったの、返事してよ!!」

 

 叫び声のする方を見ると、彼女は背中を見せて丸まっていた。


「兎束河さん?」

「透適君!!」


 ガバっと急に抱き寄せられて、何事かと僕はあわあわと慌てふためいてしまう。

でも、鼻の啜る音と、彼女から聞こえてくる震えた涙声だったのに気づき、僕は彼女を心配させていたのだと知る。


 大人びていた彼女を抱き寄せた時、彼女の頭は僕の胸の位置だったし、小刻み震えていて、僕の知ってる余裕のある彼女はそこにおらず、年相応の僕と同い年の子なんだと実感する。


 気が付けば、彼女を強く抱きしめて、腰回りをさすっていた。


「大丈夫、僕は兎束河さんから離れたりしないよ。 ご家族に約束もしてきたからね」

「家族って……あれ、みんなは」

「帰ってくれたのかな? どうやら、僕のことを認めてくれたみたいだ」


 彼女は涙を流しながら、上目遣いで僕を見てくる。

泣いている彼女を見て、ああ、なんて美しい涙を流す人なんだろうと思ってしまった僕は、ひどい男だと思う。


「怖くないの? 私は怖くないけど、異形の姿をしてるから、告白してきた人全員が怖がって私を見てくれなくなったのに」

「不思議と怖くなかったんです。きっと、兎束河さんのことを思って脅していたんだと気付いたから」

「……そんなに私と付き合いたいの?」


 直球で言われた言葉と、彼女が頬を染めてくれたことに、僕の体温が急激に上昇して、心臓が再び激しく鼓動して顔が熱くなる。


 くっついている彼女の体温と、柔らかい感触と、女の子から発せられる特有の香りに、頭がおかしくなりそうだ。


 でも、僕はそれに負けじと、彼女の顔を見て伝える。



「うん。それくらい兎束河さんが好きなんです」

「……そっか」


 そういって、僕の体から距離を取って、いそいそと少しだけ離れていく兎束河さん。

彼女の顔は真っ赤に染まっていて、自分のしていた行動を恥ずかしがっているように見える。


「えっと、告白は嬉しいんだけど、ね。

ほら、私たち、全然関わりがなかったでしょ?

だからね、その、まずはお友達からで……お、お出かけに誘ってくれもいいんだけど」


 僕は彼女の早口な言葉に、思わず口が空いてしまう。

それって、もしやデートのお誘いをしたら、受けてくれるという事なのか!?


 告白は振られてしまったけど、デートには誘っていいだなんて、もはやそれって、オッケーという意味なのでは!?


 そんな妄想に駆られて、僕の頭は彼女の色々な姿を想像してしまう。


「ね、ねえ。一応、私、あなたのことを振ってしまったわけだけど」

「う、うん。そう、だよね」

「なのに、どうしてそんなに、ニヤけているのかしら?」


 彼女にそういわれて、口角が上がり切っていることに今更気が付いた。

僕は慌てて、真顔に戻そうとするけど、デートのお誘いをすれば、彼女と2人きりになれると想像してしまい、元に戻すことはできなかった。


 どうしても、戻らない顔と格闘していると、目の前でクスクスと小さく笑う声が聞こえてくる。


「ふふ」

「兎束河さん?」

「だって、異形憑きの女を見ても驚かないのに、告白した時や、今のその嬉しそうな顔を抑えられないなんて思わないから……。ふふ、ダメね。抑えきれないわ」


 お腹を抱えて笑う彼女を見て、僕は恥ずかしさや、情けなさを通り越して、彼女に魅入ってしまう。


 そして、やっぱり、兎束河さんの笑った顔は、本当に幸せそうだなって思うんだ。


 でも、少しだけ否定して起きたい部分がある。


「兎束河さんは、異形に憑かれてるわけじゃないよ」

「え?」

「家族に護られてるんだよ」


 そういうと、彼女は乱れた長い銀髪を耳に被せて、チラリと僕を見て、にっこりと微笑んでくれる。


「……そうね、そういう考えもできるわね。

でも、私、異形のこと好きになったの。だって、家族がそうなってしまったんだから、愛せざるを得ないでしょ? 変わってるわよね」


 意外な事を言われて、僕は思わず固まってしまう。


 だって、僕も異形のイラストとかよく見るから、同じ趣味を持っているなんて思わないじゃないか。


「僕も、好きなんだよ、異形。だから、変わってるなんて思わないよ」

「ふふ、いいわよ。無理に合わせてくれなくて」

「本当だよ。夢でもよく見るくらい好きなんだ。イラストとか見るし……ほら」

「あら、まさか一緒の趣味があるなんてね」


 彼女にスマホの検索履歴を見せると、嘘ではないことが分かったのか、彼女も僕にスマホでイラストを見せてくれた。


 そのイラストは、さっきまでいた彼女の家族の異形、そのものだった。


「え、これ描いたの?」

「ふふ、そうよ。上手いでしょ?」

「凄い才能だよ!」

「ありがとう」


 兎束河さんは、笑った後、少し寂しげな表情を見せる。


「……今日ね、卒業式に家族と一緒にいる人たちを見て羨ましくなっちゃったの

私は家族が見えるけど、私以外には私の家族は見えないから、常に独りなんだなって」

「そんなことないよ。僕がいるから。兎束河さんは今日、家族と一緒に卒業式に出席したんだよ」

「そっか、そうだよね」

「うん」


 一瞬の静寂が訪れるも、彼女はまた口を開いた。


「彼氏を家族に紹介してる子もいて、私にはそれができないんだって思ってた。家族が告白してきてくれた男の子の前に現れて、脅しちゃうから。

このまま一生誰とも付き合えずに独りきりなんだって思ったらさ、寂しくて、悲しくて、気が付いたら教室に逃げ込んでた。


そしたら、透適君に告白されて、私の家族を受け入れてくれた。こんな奇跡ってあるんだなって思えたよ」


 彼女の本心に、僕も本心で答えた。


「僕、本当は告白しようと思ってなかったんだ。でも、教室にいる兎束河さんの顔を見てたら、今までの思いを告げてたよ。それで、思いを告げて良かったって思ってる。君は独りじゃなかったけど、君を受け入れてくれる人もいるって教えられたから」

「ふふ、かっこいいね、透適君」

「え、そうかな……」


 誰にも言われたことのない言葉がお世辞だと分かっても、好きな人にそういわれたら、心が湧きたち、飛び上がってしまいたくなる。


 どうにかそれを隠して、頭を掻いて、あははと笑う僕に、彼女もつられて笑ってくれる。

まさか、卒業をする日に、この高校に入ってよかったと心から思うとは思わなかったなー。

 

「ねえ、本当に、私の家族も、私のことも受け入れてくれるの?」


 彼女はじっと僕を見定めるような顔で、僕にそう伝えてくる。


 僕も、彼女と同じく空気を入れ替えて、頷く。


「もちろん。この言葉に嘘はないよ」

「そっかー。なんか、真実の愛をしれた感じがして、嬉しい……。

はは、異形に憑かれて……じゃないね。異形に護られてよかったわ」

「ぼ、僕も、兎束河さんが笑ってくれ嬉しいよ」


 彼女は満足そうに笑ってから、机に置いていた鞄を肩にかけた。


「帰りましょうか」

「うん、帰ろうか」


 僕は前を歩く兎束河さんについていく。


 残念ながら、告白は振られてしまったけど、兎束河さんを独りにしないことはできそうだし、ひとまずは結果オーライかな。


 僕の好きな人が、異形に護られている。


 確かに、普通ではないけど、娘や姉弟を心配する家族がいるのは普通のことだ。


 さて、僕はこれから彼女と付き合えるのかな?


 付き合えたら、兎束河さんを独りにすることはしない。


 兎束河さんを独りにしたら、僕が死ぬときか。


 人によっては割に合わない契約だろうけど、何もない僕にはありがたい契約だ。


 だって、僕にはもったいないくらい素敵な人を護れる権利を手に入れることができたから。


 僕はつい、彼女と付き合えた時のことを考えて、鼻歌を奏でそうになる。

すると、兎束河さんは、僕の方を振り返って止まり、前かがみをして上目遣いで僕を見て微笑む。


 太陽の光に照らされた彼女の姿は、なんというか、有名な画家の描いた一枚絵を見ているくらい、僕の心を掴んで離さない。


「ふふ、どうして後ろについてるの。

せっかくだし、一緒に隣歩いて帰りましょう?」


 その言葉に、涙が出そうになったのは内緒だ。


「う、うん。もちろん!」


 これからも、彼女の隣を歩きたいな。


 そう思わずにはいられないほど、彼女の笑顔は僕の心を掴んで離さない。





ーー・ーー ー・ ・ー・・



 私には、彼氏ができないと思っていた。

ううん、それどころか、自分の家族も作ることは出来ないんだと思っていたの。



 だって、私の後ろには、中学三年の卒業式直前に亡くなった家族の異形が憑いてるから。



 最初見た時は、心臓が止まってしまいそうなほど驚いたわ。

でもね、私を害することはなかった。四六時中、私の後ろに憑いているし、よくよく観察したら、私の家族なんだって思えた。


 ママは料理上手で、パパはトラックの運転手、弟は小学6年生で中二病に罹っていて、小太郎の首輪も付けてたから、そういう事かって思ったよ。


 みんな、私のことを心配して憑いてるんだって。

私は独りになったけど、私の身に危険が及ぶと、加勢してくれるくらい、異形の存在は頼もしい者に変わっていた。


 遠方の母の祖父母が、私を受け入れてくれたんだけど、私は我儘を言って、家族の思い出がある家に残ったんだ。


 人には見えないし、私だけなら問題ないし、寂しくないから、これでもいいやって思ってたの。


 でもね、高校一年生の頃、夏休み前に男の子に告白されて気付いたわ。


「な、なんだ、その骸骨の化け物!!」

「え」


 私はそれを知ったとき、ひどく呼吸が乱れて、取り乱したのを覚えてる。

家族は私が心配なあまり、異性を酷く毛嫌いして、告白されるとき、絶対に姿を見せるようになった。


 おかげで、私に告白すると化け物に呪われるという噂が広まって、いつしか男の子たちは、私に寄りつかなくなった。それどころか、目を合わせることもなくなる始末で、なんというか、とても心が沈んだのを覚えてる。


 高校生になったら、素敵な彼氏と出会えると思ってたし、そういうことにも興味はあった。

中学まで、そういうのはなかったけど、家族を無くして、心から愛せる人を見つけたいと、願っていたのかも。


 女の子たちは私を庇ってくれたけど、半分嘘で半分は真実だっただけに、私は友達にも心を開けなくなった。でも、本当に独りになるのは嫌だから、適当に話を合わせて、表面上で笑うことが多くなって、何とも言えないモヤっとした気分になったなー。


 でも、そんな中でも、たった一人だけ、私を見てくれる子もいた。


 透適 剛毅君だ。

 

 高校1年と、3年の2年間、同じクラスで、私のこと好きなんだろうなって分かりやすいくらい、私のことを見てたし、さすがにクラスが3年間も同じなら気付く。


 名前のわりに、最初はなよなよとした雰囲気だったけど、いつだったかあんまり似合ってない短髪になって、細すぎ薄すぎの眉毛になってたとき、女子のみんなは笑ってたし、男子も揶揄ってた。


 でも、私は自分を変えられる人は、割と好印象だったりする。

だって、私は自分自身を変えようとは思わなかったから。私を意識してなのかは、さすがに分からないけど、自分を変えることは勇気のいることだから、ちょっぴり羨ましかったな。

 

 そういえば、落ち込んでる彼に話しかけた記憶がある。

たまたま、先生から荷物を運んでほしいと言われて、日直だった私たちに頼んできたんだ。


「私はいいと思うよ」

「え」

「似合う似合わないとかじゃなくて、自分の外見を変えようとする姿勢」

「あ、ありがとう……兎束河さん」

「ふふ、どうして、さん付けなの」


 それくらいの薄い会話だったけど、彼には何か思うところがあったのかな。


 といっても、そこからあまり話した記憶はないけど。


「ねえ、ネオンは細いタイプより、マッチョがいいの?」

「何の話?」

「いいから、教えてよ!」

「まあ、自分より細いのはちょっと……」

「わかるー、それはちょっとキツイよね」


 多少の筋肉は、ちょっと触ってみたいし、欲しかったりする。

私は運動が苦手だし、筋肉もつかない体質だから、男の子のチラリと見える筋肉を見るとドキドキはする。


 そんなくだらない話を高1の終わりくらいに話してたんだけど、高3のときだ。

同じクラスになった透適君が、凄く成長していて、とてもかっこよくなってたの。


 でもね、性格までは変わってなくて、やっぱりちょっとナヨナヨして、人に揶揄われる所は変わってなかったし、私を見る目も変わってなくて、少しホッとした。


 私の噂は凄く広まってたから、女の子以外、私に興味を示す男の子はいなかったから。


 一向に告白してこない透適君だったけど、それは悪い気分ではなかった。

誰にも見られないより、誰かに見ていてほしかったのかもしれない。それくらい、私の思春期の心は、複雑に絡み合っていたのかも。



 最終的に、透適君に告白されることなく、私は誰とも付き合えないまま、高校の卒業式を終えてしまったの。


 あの物悲しくて、孤独な気分にさせてくる独りには広すぎる家に帰りたくなくて、私は教室に戻った。


 卒業式に家族が来てくれることも、家族に彼氏を紹介することも出来ないんだなって考えて、遠くの景色を見て、少しだけ泣きそうになった。

 

 そんなタイミングで、透適君が現れたんだ。


 久しぶりの告白だったけど、私は期待なんてしなかった。

期待して、また家族を化け物扱いされるくらいなら、ここで家族を見せて、さっさと私を諦めてもらおうと思ったわ。


 でも、なぜか、私は透適君にすこしだけ期待してしまった。


 だって、告白の内容が、詩人みたいに思いを込めてくれた告白だったから。


 私はつい、彼の手を取り、私に憑いている家族を見せた。


 すると、どうだろうか。

あんなにも、告白で緊張して真っ赤な顔で震えていた彼が、私を抱き寄せて家族の異形から身を挺して守ろうとしてくれたのだ。


 ハッキリ言って、それだけでも心にキュンと来るものはあった。

今までの人は、怯えたり、怖がったり、私を置いて逃げたりと、人として当たり前の行動だけど、私の家族を拒否された気持ちになって、心臓を握られたみたいに心が苦しくなったの。


 正直、それだけでも私の心は、彼に期待する方に傾いていたのだと思う。


 だって、その時の透適君、凄く男らしくてかっこよかったから。


 でも、私は、私の家族を受け入れてくれない人とは付き合えない。

だって、この異形の姿をした家族は、きっと、私の元を離れようとはしないから。


「怖いでしょ? 私と付き合うと、彼らも憑いてくる。

私を傷つけることをしようとすると、あなたに悪意が降ってくるの、透適君。


私に告白すると呪われるっていうのも、あながち嘘じゃないのよ……」

「そう、なんだね」


 なぜだろうか、彼は驚いては見せたけど、とても冷静だった。


 私は彼の態度が気になった。

だって、告白するときは、あんなにもテンパっていたのに、誰もが恐れる異形の姿を見ても、体は震えてなくて、私を守ってくれているから。


「少し、待ってて」

「え、ちょっと」


 そういうと、彼は私から離れて、家族の異形に近づいて、そして……。


「透適君!?」


 彼は私に憑いていたはずの異形と共に、姿を消したのだ。


 私の視界は歪んで、ベランダを見たり、廊下を出たりしてみたけど、彼の姿はどこにも見当たらない。


 本当に一瞬の出来事過ぎて、気が付けば私は彼の名前を叫んでいたの。


 どうしてこんなのにも、一生懸命に声を出して、彼を探しているの?


 自分でそう疑問に思ったけど、そんなこと一瞬で解消されたわ。


「だって、私、彼に恋をしたの……」


 二年間、ほとんど関わりはなかった。

でも、異性として私を見てくれた眼差しと、たまに話しかけても態度が変わらない彼に、本当はどこか惹かれていたのかもしれない。

 

 だけど、怖くて声をかけられなかった。

だって、私には異形が憑いてるから、異形を憑いてる私を見たら、嫌われてしまうと思ったから。

 

 いなくなって分かっても遅いかもしれない。


 私はいつも、いなくなってから、常に私のことを気にかけてくれる存在を失ってしまう。

失ってからでは遅いと知っていながら、私はまた過ちを犯してしまった。


 どのくらい時間が経ったのだろうか、数秒だったのか数分だったのか、数時間だったのか。


「透適君!? どこにいったの、返事してよ!!」


 姿を見せてくれない彼を待ち続けて、孤独のあまりそう叫ぶと声が聞こえた。


「兎束河さん?」

「透適君!!」


 私は透適君が、姿を見せた途端、彼のもとに近づいて、ガバっと抱き着いた。

ホッとした気持ちと、どうしていなくなったのと言葉にできない苛立ちのせいで、彼の体を叩いてしまう。

 

 そんな私を、彼は強く抱きしめてくれた。


 人に抱き着いたのはいつぶりだろうか。

私は甘えるように彼の体に強くしがみついて、お日様の匂いを感じながら心を落ち着かせた。


 彼と言葉を交わすと、どうやら彼は私の家族と対話していたようだ。

透適君が家族に受け入れられたと聞いて、私は我慢できずに、再び聞いてしまう。


「……そんなに私と付き合いたいの?」


 自分でも卑怯な言い方をしたと思う。

だって、そうすれば、彼の心臓が強く鼓動して、真っ赤な顔をした彼を見ることができる。



「うん。それくらい兎束河さんが好きなんです」


 私の全てをさらした状態で、好きだと言ってくれるって信じてたから。


 私は、その言葉を聞いて、途端に顔が熱くなってることに気づいて、彼から距離を取る。

まだ、付き合ってもいないし、手だって繋いだこともないのに、いきなり抱き着くなんて……。


 急に現れた羞恥心に耐え切れなかったの。


 あれだけ後悔していたにも関わらず、天邪鬼な私が姿を現す。



「えっと、告白は嬉しいんだけど、ね。

ほら、私たち、全然関わりがなかったでしょ?

だからね、その、まずはお友達からで……お、お出かけに誘ってくれもいいんだけど」


 自分でもヘンテコなことを言っている自覚はあるけど、すぐに付き合える軽い女だって思われたくなかった。


 本当はすでに、三年間ため込んできたやりたかったことを、大好きな彼とあんなことや、こんなこともしたいと思ってるくせに、私の口は早口で余計なことを言ってしまう。


 でも、私の言葉を聞いても、彼は嬉しそうにニヤけてて、それがなんだかおかしくて、数年ぶりに私は心から笑えたんだ。


「だって、異形憑きの女を見ても驚かないのに、告白した時や、今のその嬉しそうな顔を抑えられないなんて思わないから……。ふふ、ダメね。抑えきれないわ」


 しばらく彼と会話を楽しんでいると、彼は真剣な顔で私に伝えてくれた。


「兎束河さんは、異形に憑かれてるわけじゃないよ」

「え?」

「家族に護られてるんだよ」


 そういわれて、私のぽっかり空いた穴は、彼の言葉で埋め尽くされていく。


 もう、私は彼に隠し事をしたくないと思って、彼に私の思っていたことを伝えていた。


 異形の姿にはなってしまったけど、家族から守られていたし、家族の影響で異形好きになったし、写真には映らない家族を模写してイラストにしたり、卒業式で寂しかったことも、奇跡が起きることも、包み隠さず伝えていたの。


 そしたら、彼も本心を伝えてくれた。


「ふふ、かっこいいね、透適君」


 私の言葉に、コロコロと表情を変える透適君が、本当に素敵で輝いてみえた。


 だから、もう一度、透適君が本当に私たちを受け入れてくれるのか聞いてしまう。


 彼は、真剣な表情で頷いて、自分の言葉に嘘はないと教えてくれたわ。


 それだけでも、満足だけど、やっぱり彼と付き合いたい。


 帰るとき、私の後ろを歩いてくる彼を、隣に誘った。

透適君は、瞳がウルっとして、今にも泣きそうになりながら、最高の笑みを私に見せてくれた。


 ああ、好きだなって思いながら、私は彼の隣を歩く。


 彼が一生私を愛してくれるように、私も、彼と同じように変わろうとそっと心で決意することができた。







~数年後~



「僕と結婚してください」


 愛の女神様のいる神社で彼にプロポーズをされた。

この6年間、色々なことがあったけど、その度彼に支えられて生きてこれたわ。


 そして、私もまた、彼を支えてきたつもり。


 だから、わかるの。


 きっと、彼はここが、愛の女神が眠る神社だとは知らないんだろうなって。


 そういうところも、好きなんだけどね。


 なんてことを思いながら、私は視界を歪ませて、声を振るわせながら、頷いた。


「……はい」

「一生君を幸せにする。愛してるよ、愛華(あいか)

「私も愛してるわ、剛毅(ごうき)君」


 彼が私に抱き着いてきて、ぎゅっと抱きしめてくる。


 私が幸せに浸っていると、何かの気配を目の前に感じ取った。


 目を開けると、そこにいたのは、猫背で二足歩行のふさふさな毛を生やした大きな獣の異形の姿。


 その子は、片目のつぶれた狐のお面をつけて、私たちをじっと見つめていた。



 ああ、そうだったのね。



 どうやら、私の愛する人も、異形に護られているみたい。


 ふふ、彼は知らないみたいだけど、伝えたらどうなるのかしら。


 たぶん、僕たちの出会いは運命だったんだよって、可愛らしい満面の笑みを、私に見せてくれるんだろうな。


 だって、異形に守られている私のことを愛してくれる人だもの。


 きっと、そうに違いないわ。



ー完ー


短編たくさん書く予定です!


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