十匹のレッサードラゴン。
「じゃあアトス・ホーンさん、この町の近くでのレッサードラゴンの大量発生は間違い無いのね?」ミナ・ファーロンは真黒でウェーブを描く自分の髪をいじりながら、やや興奮気味にこの町の冒険者を束ねる冒険者ギルドの長。アトス・ホーンに詰め寄った。
「ええ、その通りです。そのせいで今この町は、食料。特に肉製品の高騰が始まっている次第で……」冒険者ギルドの長、と言うよりこの町の中間管理職といった感じを漂わせる小太りの男、アトス・ホーンはハンカチで汗を拭きつつこの町の窮状を説明する。
「この町はドラゴンを狩るために作られた、そう言っても過言ではありません。かつてはドラゴン狩りで栄えていた時期もありました。でもそれも過去の事」
アトス・ホーンは大きなため息をつき、更に説明する。
「ここ三十年でレッサードラゴンは乱獲されてしまって、この町の近くでは見かける事も無くなりました。そこでこの町は畜産業を生業としてやっていこうとしていたのです。なのに」
「またレッサードラゴンが現れ出したと?」グレン・ドスが赤茶色をした髭を揺らして割って話に入る。
「は、はい。冒険者ギルドとしてはありがたいのですが、畜産業ギルドにとってレッサードラゴンは、もはや害獣。とっとと退治するかせめて町に近づけ無いようにしてくれと」アトス・ホーンは、またため息をつく。
「わたしが話しているのに、割って入って来るんじゃ無いよ!!」ミナ・ファーロンが怒って、グレン・ドスの頬を叩く。
「痛ってぇ、す、すみません。姉さん!」そう言ってグレン・ドスは大きな身体を縮こませた。
「それで、レッサードラゴンは現在何匹確認されているのです?」ミナ・ファーロンは膝の上まで隠してある、レザー製のブーツをあえて見せるように足を組み。アトス・ホーンに質問する。
「ハイ! 今のところ十匹確認されております!!」ある種の趣味を持っている男なら、たまらなく魅力的なその足から視線を慌てて逸らすと。アトス・ホーンはレッサードラゴンの個体数を、命令でもされたように正確に話す。
「チョット数が多いわね、こちらの人数はたった四人なのよ?」ミナ・ファーロンの腕が、レザーアーマーで抑え付けられたバストを下から持ち上げるように組まれる。
「そ、それなら大丈夫です。この町から三日程の場所に在る町、ベートからも実力はあるがまだレッサードラゴンを狩った事の無いパーティー『影槍』と言う“中堅”の冒険者が手を貸してくれる。と言う連絡が朝方有りましたので」ミナ・ファーロンに目のやり場を失くしたアトス・ホーンは、横を向いて流れる汗を拭きつつ、そう伝えた。
「あら? で、そのパーティーの人数は何人かしら?」
「さ、三人です、ハイ!」
チョット間が空きましたが、98話でした。
では明日の99話を、お楽しみください。




