ネズミとネコ、話をする。
トルクゥは思わず立ち上がり、ハンドアックスを吊るしているベルトに手をかける。だがハンドアックスはこの魔王の部下に渡してしまっていた。何たる失敗か!
「どうかしましたか?」だが、自らを『魔王』と称したこのアルテアという女性は警戒心の“けの字”も見せない。
だからトルクゥはもう一度確認した「あなたは本当に『魔王』なのか?」と、すると。
「ええ、わたしは確かに魔王です。──ああ」そう肯定した後、トルクゥが何を言いたいのか理解して、明るく笑いだした。
「あなたの聞きたい事は、わたしがデーモンロードなのかと言う事ですね? なら答えは簡単です。わたしはおとぎ話に出てくる“魔神の王”ではありません」そうアルテアは断言した。
「では、アルテアさん──え? さんは着けなくていい? ではアルテア、あなたは何をもって『魔王』を名乗るんです?」トルクゥは真剣にそう訊ねた。
アルテアはまだクスクスと笑って「もちろん“王様”だからですよ?」と言う。
トルクゥは混乱する。するとアルテアは、こう付け足す。
「わたしは“人間”の“魔術師”の“王様”なんです、だから『魔王』なんです。分かりましたか?」
トルクゥは納得した、確かにそれも“魔”の”王“には違いない。
という事は、魔王エルドルと言う奴も魔術師の王様と言う事なのだろう。ではアルテアはエルドルと繋がりがあるのだろうか。
「“魔王アルテア”あなたは“魔王エルドル”と知り合いですか?」トルクゥは少し警戒心を強めて聞く。
「知り合いと言うほどではありませんが、何度か顔を見た事があります」そう魔王アルテアは答える。
「わたしも魔王と言う職業に付いて長いという訳ではありませんが、魔王エルドルはつい最近魔王の仲間入りをした新人なんです」アルテアはそう言った。
──職業? ──新人? 魔王というのは職業の一種なのか? まあその事は後でもいい。肝心なのは魔王アルテア、あなたも村を焼き討ちしたり人々を奴隷にしたりするのか。そう聞こうかどうか悩んだその時だった。
「冗談じゃない!」魔王アルテアは初めてトルクゥを睨んだ。
「初めに謝ります、貴方の思考を読んだことを。ですが貴方の考えはわたしに対して余りにも酷い! わたしには人間を家畜…、いや。そんな家畜以下にあつかうような事をする“趣味”はありません!」
トルクゥは(しまった!)と思う、確かに今の考えはアルテアに失礼だった。たとえ考えた事を勝手に読まれたのだとしても…。
「どうも貴方とわたしの『魔王』と言う職業に対する考え方に、大きな溝があるようですね、そこでどうです? まず魔王という職業がどんな物かを知ると言うのは?」
……、なにがしたいか分かった人。何人いるかな?