レクターレ王国軍、レイガス・サロー少佐の戦い。
レイガス・サロー少佐率いる【弓騎兵】隊の戦い方は、言ってしまえば【海軍】の通商破壊の陸上版だった。
青軍の備蓄品は六ヶ所ある砦から見て丁度真ん中、四日前まで青軍が司令部を置いていた、大きな要塞に今もある。
青軍は最初、赤軍の戦力からしてその戦い方は二~三日の『短期決戦』と踏んでいた。
六ヶ所ある砦の一つを攻撃して、あわよくばその砦を占領し。青軍本隊との戦いをおこなう、博打のような戦いだと。
もしくはもっと賭博性の強い、あえて六ヶ所の砦を無視して。青軍本隊が鎮座する要塞攻略などと言う殆んど『自殺』に近い、作戦とさえ呼ばれない戦い方も囁かれてもいた。
当然だと思われていた。
青軍の戦力は赤軍の四倍、それも【第三軍】を戦いに参加させる事が出来たらであったからだ(【第三軍】は自衛権が脅かされないと戦えない)。
だが赤軍は『短期決戦』をさっさと捨て、自分達で簡易要塞を作って『持久戦』に持ち込んだ。
青軍の勝利条件を『自軍の防衛』から、『赤軍要塞の攻略』に変えてしまったのだ。
そして【陸軍】上層部はこの変更を、『是』と判断した。当然だった、なぜなら赤軍は実際に要塞を作って見せたのだから。
こうして攻守を見事に逆転された青軍は、第六砦に本部を移す事となり。元司令部に貯蓄されている莫大な物資は、わざわざ道で運ばなければならなくなった。
そして赤軍はそんなおいしい獲物を見逃さなかった。
「少佐、第六砦が動き出しました」レイガス・サロー少佐の右腕の一本【千里眼】を持つルーク・ロイド准尉が、赤茶色の瞳を持つ両目を閉じてそう警告を出す。
「さすがに青軍もこれ以上の被害は避けたいようだな」サロー少佐がそう言うと。
ルーク・ロイド准尉は瞳と同じ色を持つ頭髪を立てに振り、こう続けた。
「はい、相手はスラス・コクトー中佐ですから」
「あの人かぁ、厄介な相手を差し向けて来たものだ」右頬の傷を指でなぞりながら、レイガス・サロー少佐は笑う。
まだ十代後半のルーク・ロイド青年は、コクトー中佐と、サロー少佐との関係、そしてサロー少佐の頬の傷の意味を知らない。たぶん二人に聞いても軽くあしらわれるだけだろう。
「さてそうとなると、いつものような奇襲では面白みが無い」馬の上で両腕を器用に組んで、レイガス・サロー少佐は悩み出すが、口のはしがぴくぴくと小刻みに動く。
まるで悪い悪戯でも考えているかの用だ。──その様にロイド青年には見えた。
何とか、書けました。
レイガス・サロー少佐と、スラス・コクトー中佐の戦い。
その導入部です。
もっとも、どちらを勝たせるかはまだ考えていません。
ど、どうなるのでしょう…。




