レクターレ王国軍、戦いの音色。その日の【第三軍】
自他共に何でも屋だと思っている【第三軍】の朝はとても早い。
その日も前日の襲撃からそう時間を置かないで、今日の当番兵が【陸軍】と、自分達の朝食を作るために寝床から起き出し、小麦粉を練り始める。
パン(というよりもナンに近い物)焼き窯が数えるのも嫌になる位ズラリと並んでいる。
そこへ先ほどの練ったパン生地を、一つ一つ焼き窯に並べていく。
東の空が明るくなる頃、パン焼き当番のウーク・タム十人隊長は。その役職が示すように彼の部下達に、出来上がったパンの取り出しを行わせようとした時。
丘の頂上からラッパが激しく吹きならされる。
「敵襲ぅ!!」ウーク・タム十人隊長は、かつて所属していた【陸軍】で、悪夢の中まで響いていた程そのラッパの意味を覚えさせられていたのですぐに反応出来たが、一般人から【第三軍】に入った部下達には解らなかった。
「敵襲だと言っただろう! 青軍がここへやって来たんだ!!」十人隊長の怒鳴り声で、やっと今自分達が【軍人】である事を思い出した部下達が、飾り気の無い兜を被る。
「隊長! パンはどうしますか?」【第三軍】は、良くも悪くも【陸軍】とは違う。だからウーク・タム十人隊長はこう言った。
「兜を被ってから回収だ、多少焦げていても文句は出ないだろう」と。
元【陸軍】や、【海軍】から【第三軍】に入った者達は。大きな音で激しく吹かれるラッパの意味を解っていた。
「さあ貴女達、いよいよ楽しい戦いの時間ですわ」ロクサーヌ・アルク百人隊長が、自分の部下達(全員が女性)に指示を出す。
「私達の任務は解っている? そう、負傷者の運搬と【回復術】での治療よ。でも決して忘れないで! 絶対に一人で行動しない事! 必ず三人以上で活動する事。私達の敵は味方にもいるのよ!!」アルク百人隊長は大の男嫌いで知られてもいた。
「さあ貴方達、いよいよ楽しい戦いの時間だぞ」ルドロフ・ドムス百人隊長が、自分の部下達(全員が男性)に指示を出す。
「私達の任務は解っているな? そう、重たくて大きい荷物をあの丘の頂上まで運ぶ事だ。だが絶対に忘れるな! 決して一人で行動はしない事! 必ず三人以上で活動する事。私達の敵は味方にもいる!!」ドムス百人隊長は大の男嫌いで知られていた。
同じ【陸軍】内でも丘の頂上で要塞の警護をしている部隊と、丘の下で同じ飯を食べている部隊では、【第三軍】の扱いが微妙に違っていた。
丘の下で警護をしている部隊は【第三軍】を頼れる同胞として活動してくれているのに対して、丘の頂上で青軍と戦おうと待ち構えている部隊は、【第三軍】を『王族の玩具』又は、『ただの荷物運び』と思い込んでいた。
【第三軍】の朝でした。
こういう連中なんです、基本的に。
この後【第三軍】がどのように変わるのか、あるいは変わらないのか。
その辺も書きですね。
では、また。




