レクターレ王国軍、蛮人の戦い。
「困ったなぁ」アッガス・マルド少佐は頭を掻く。
「困りましたねぇ」ロエル・ハス少佐は、自分の愛馬が雑草を美味しそうにかじっているのを見てそう言った。
「本当に困ったモノだ」アルドル・バース少佐は“母なる海”に沈もうとしている夕日を眺めてつぶやく。
三人共同じ事で考えを一致している、つまり『まともな食い物を持ち合わせていない』という事である。
…一応、とても固くてとんでもなくしょっぱい干し肉はある。だがあれで今日の夕食を終わらせるのは、中々悲しいものがある。
とはいえ『お腹が空いたので帰って来た』などと言って第六砦へ入れて貰うのは…ウム、三人共プライドが許さない。
「──仕方が無い、あれをやるか」アッガス・マルド少佐がそう言って、凄みのある笑みを浮かべる。
その夜、赤軍が実質支配している要塞に向かって、百騎の【騎士】が襲い掛かる。要塞の周囲は大小の丘と森で覆われ。そこをぐねぐねと細い道が丘と丘のあいだを這う様に続いており、更に道には数百本の杭が障害物として打ち込まれていて。そこを実に百騎もの【騎兵隊】が進むのは自殺行為に思えた、──そう普通の【騎士】ならば。
【遠距離攻撃の出来る【魔法騎士】の諸君、出番だ!】アッガス・マルド少佐の【念話】が、三十人の魔法を使える【騎士】達の脳に伝わる。
最前列を走る青銅製のプレートアーマーを着た【魔法騎士】達が、ランスを構えて【呪文】を唱え始めるとランスの先端が赤く光始める。
【放て!】三十本のランスから【火の矢】が放たれる。
「始まりましたね」ロエル・ハス少佐はその年齢に比べて幼く見える顔に、満面の笑みを浮かべてアルドル・バース少佐に話かける。
「まったくお前ら二人は、なんて事に私を巻き込むつもりだ」アルドル・バースはそう苦言をはさむが、そこらへんに転がっている石に目と鼻を刻んだ用な大雑把な顔は笑っていた。
二人ともプレートアーマーはつけていない、今はダブレットというプレートアーマーを付ける為の“鎧の下着”をつけているだけだった。
これからおこなう事にあの装備は重すぎる、何故なら彼らの部隊はこれからまだ木の伐採されていない森の中を歩き、要塞の裏側。おそらく大量の物資が備蓄されている“はずの”場所を攻撃して、その赤軍が備蓄している食料を『強奪』しようとしているからだ。
簡単に言っても無謀だし、例え成功しても【山賊】のおこないと変わらない愚行だった。
ここでストックが無くなりました。
10日~20日ほど時間をかけて、またストックが貯まったときに事前報告を出します。
それまでお待ちください。
では。




