ネズミ、雨に打たれる。
数日後、トルクゥはワシ鼻のボルチの案内で、魔王エルドルとその配下のゴブリン共に襲われた。ボルチ達の住んでいた村へ着いた。
「これゃあひでえ」ボルチはつぶやく。
確かに酷い有り様だった、村の回りに広がる畑からは作物が乱暴に引きぬかれ、あるいは潰されていた。特に麦畑は放火によってほぼ全滅だった。
周りにはまだ死臭が漂ってはいたが誰がおこなったのか、死体はきちんと埋葬されている。
ゴブリン共ではない。足あとはちゃんとした靴、最低でもサンダルを付けた者達の物だったからだ。
「誰かが埋葬してくれた…」ボルチは鼻声でつぶやくと、その即席の集団墓地に手を合わせる、トルクゥも手を合わせた。誰かは知れないがこの惨状を見てどこかの人々がここの村人を埋めてくれたらしい。それだけでありがたい。
ポツン、ポツンと雨が降り始めた、トルクゥとボルチは仕方なくこの元村で一晩明かす事にする。
翌日、昨日からの雨はまだ降り続いている。
「どうします?」ボルチはそう聞いて来る、トルクゥは仕方ない、と言う仕草をして。
「行くさ、このままではゴブリン共の巣への痕跡も流されてしまう」そう言ってトルクゥはボルチに、ここまでの道案内の料金を払いマントのフードを被って森への道を進む。
昼時になる頃、大きな馬車が二十台はある商隊と出会う。馬車の何台かが脱輪をしたらしかった、トルクゥは横を通りたがったが車輪を付けなおそうとしているおそらく護衛の人々が邪魔でそれすらも出来ない。
「なにか手伝いましょうか?」トルクゥはこの商隊で一番偉そうで、そして一番年を取って居そうな人物に声をかける。
その人物は商隊の人々へ声を上げるのを止めて、トルクゥの顔を見て意外と温和な微笑みを浮かべて。
「いえいえ、それには及びません、どうぞこのキャラバンの横を通って…、やや! これでは横をとおれませんな! さてどうしたものか」道を塞いでいる馬車を見て唸る。そこへ馬車から身長二メール(約二メートル)を超える大男が。
「ゼーダ!」と叫ぶ。
「なんなのだ、今は忙しいのに」そう言って、おそらくゼーダと言う名の男は馬車へと走る。
何かを話していた男は、トボトボという感じでトルクゥの元へ戻り。
「…まだ数時間はかかるとの事です。さて、どうしたらよいのやら…」そうゼーダと言う男が言うと。
「では、わたしの話し相手ではどうです?」いつの間にかゼーダの後ろにいた赤い高価そうなローブのフードを深く被った、おそらく女性がそう提案して来た。
たった21話のお話で、登場人物が集まるのにこんなに話数をかけるな!
と、思ったひと。ハイ!!