レクターレ王国軍、レイガス・サロー少佐。
レイガス・サロー少佐が純粋な【騎兵隊】から【弓騎兵】という、この国では邪道と思われている戦職に就いたのは。八年前に行った南方への視察旅行での出会いが原因だった。
レクターレ王国では、ただ単に“母なる海”とだけ称される。西に広がる淡水の巨大な湖。
その湖を北方に見る、途轍もなく広い草原地帯で覇権を握る大帝国。マグ帝国。
レイガス・サローが、マグ帝国で見たのは。数百万人にもなる【弓騎兵】による大演習だった。
その当時でも【騎兵隊】の運用には疑問の声があった。曰く、馬の育成、鎧の値段、そして何よりその戦法の単調さが問題だった。
確かにランスによる突撃力は強烈だった。だがしかし、それだけだった。馬上での機動力は素晴らしいが、兵隊も馬鹿ではない。馬に乗った【騎士】に近付こうとする【歩兵】はいない。
もし【騎兵隊】を攻撃する様に命令されれば、【歩兵】は集団で【騎士】を囲み。フックの付いたポールウェポンで馬上から引きずり落としてとどめを刺す。
さらに【騎士達】の単調な攻撃方法も問題だった。そもそも【騎兵隊】が使えるのは、なだらかな場所に限定されていた。間違っても森の中では【騎兵隊】は使えない。
そんな時だった、レイガス・サローが【弓騎兵】による集団戦を見せつけられたのは。
彼は思った「これだ!」と。
馬の上から弓矢を放つ。その単調でありながらも、それでいてとても柔軟かつ多彩な戦法に、彼の目は釘付けになった。
基本的に【弓兵】である為、無理に接近する必要は無く、プレートアーマーのような鎧は不必要。極端な話、頭と胴体さえ守れてさえいれば良い。
馬の方もイカレタ品種改良で出来た“軍馬”など不要で、足さえ早ければどんな馬でも良く。戦場で戦へさえすれば、背の低い農耕馬であっても良かった。
最大の問題は、馬の上から正確に矢を放てるかだったが。これは訓練で何とかするしか無い事だ。
こうして持ち帰った【弓騎兵】の構想だったが、案の定というべきか【陸軍】からの反応は芳しく無く。何とか“実験部隊”扱いでレイガス・サロー“少佐”の手で、“テスト”される事となった。
だがこの【弓騎兵】は訓練を公開し始めると【陸軍上層部】の中から『【騎兵隊】の出番は終わった』と好印象を発する者が出始めた。
もちろん面白く思わないのは【騎兵隊】だった。彼らの伝統から大きく外れた存在、として【弓騎兵】を大いに嫌った。(アッガス・マルド少佐は、その急先鋒だった)こうして消え去りそうになっていた【弓騎兵】の窮地を救ったのは、第一王位継承者の一声だった。
「【弓騎兵】はわたしが貰います」この言葉が、レイガス・サロー少佐の未来を救った。
登場人物が増える増える、しかもそれぞれこのお話に大きく関わって行きます。
どうなるのか、僕にも分からなくなって来ました。
オチは、変えたくないなぁ。
では、58話で会いましょう。




