レクターレ王国軍、レイドル・ウルリスの回想
マカロス・リクター少将は、よく分かっていない二人に『侵略』を教える。
「我が青軍の支配地に赤軍が勝手に要塞を作った。これを『侵略』と言わずに何と言う?」
ダストン・ロイド中佐と、スラス・コクトー中佐はそろってうつむく。
『第三軍の参謀も人が悪い。だがこれで我が頭の硬い陸軍の将校達も、少しは頭を柔らかくしてくれるかも知れない。──待てよ? 確か第三軍設立には、あの愛らしい第一王位継承者が関わっていたよな…。だとすると一番人が悪いのは』
そこまで考えてマカロス・リクター少将は思考を停止する。──不遜罪に当たりそうだったからだ。
「……では、我ら青軍がおこなうのは、赤軍の作った要塞を攻略する事ですか?」改めてスラス・コクトー中佐は、水晶球に映し出された要塞見つめ直すと。複雑な顔をして少将に聞いて来る。
「演習の中止が通達されてこない以上、そうしないと我々青軍はこの演習で、負けの判定を受けるだろうな」マカロス・リクター少将は断言する。
「私はそういう戦争が嫌いで【騎兵隊】を選択したのですがねぇ」コクトー中佐は、小さなため息をついた後。
「参謀達を連れて来ます」そう言って部屋を出ていく。
「で、では私は【魔術師】達を連れて来ます!」慌てて出て行こうとするダストン・ロイド中佐の後ろから、マカロス・リクター少将が声をかける。
「ついでに青軍全軍にこの第六砦へ集まるように伝えてくれ、今回の演習の主戦場は、第六砦の更に南だと」
ロイド中佐は慌てて敬礼をした後、バタバタと指令室から出ていく。
「青軍の司令官は結構優秀ですな、まだ情報不足のはずなのに。こちらの意図を嗅ぎ付けましたぞ」
この演習の支配者である、陸軍司令部付の【魔導参謀】の一人がやや興奮気味にそう言う。
「マカロス・リクター少将。私の観察ではここまで切れる“男”とは思えませんでした」そう言ったのは、ニーア・ウルリスの夫であり。元陸軍少将で、現在第三軍の実質的な司令官である。レイドル・ウルリス大将である。
第三軍は、スル・ガーゴン現参謀長の言葉“本人曰く失言”と、アルテア=アトラスの発想力で出来た組織だったが。それを実現するにはアルテアは幼すぎた。
そこで白羽の矢が立ったのが、レイドル・ウルリスだった。
初めは“理想論だ”と思っていたが、妻の熱意とアルテアの十歳とは思えない発想力。そして半ばヤケになった家庭教師“!”の行動力を見て“実現可能か?”と思ってしまい。
『成人するまで』の約束で関わったが、やってみると面白く抜け出す時期は失っていた。
段々とお話は進んで行きます。
……チョット遅い気もしますが……。
書いてしまったモノは仕方がありません。
お付き合いをしていただくと嬉しいです。
では、52話で会いましょう。




