レクターレ王国軍、侵略する赤軍。
青軍司令官マカロス・リクターが第六砦に入ったのは、司令部直属の騎兵隊の中から特に足に自信のある馬を持つ者達で構成された【強行偵察部隊】からの第一報が入った後。すぐに司令部を放棄、馬に乗れる者から先に第六砦に向かわせた結果。たった一時間という異例の速さだった(もっとも、徒歩で移動するしか方法の無い。歩兵全員が砦に付いたのは五時間後だった)
マカロス・リクターは第六砦の指揮官である、ダストン・ロイド中佐と共に【青軍騎兵隊】隊長のスラス・コクトー中佐から、要塞の全容を見せられた。
「長くしゃべるのを聞かされるより、ご自身の目で見た方が良いと思いまして」そう言って背負い袋の中から、手のひらに乗るくらいの水晶球を取り出すと短く呪文をつぶやく。水晶球が一瞬光ると中にその要塞が映し出される。
「──なるほど、確かにこれは要塞だな」そう言ってマカロス・リクターは目を水晶球に近づける。
「こういう便利な物が有るのでしたら、うちの砦にも支給して頂きたかった」第六砦司令官ダストン・ロイド中佐が苦言を告げる。
「あいにくこれは私の持ち物で、支給品では無いのですよ」スラス・コクトー中佐がそう言って両肩をもち上げる。
コクトー中佐がこの水晶球を持っていたのは、青軍と赤軍の騎兵戦を記録して演習後に、問題点などが無いかを見る為であって。今回のような【強行偵察】に使う事をあらかじめ想定していたわけでは無い。
「だが便利だな、この演習が終わったときにでも。支給品候補に推してみるか」マカロス・リクター少将はそう言った。
三人は小さな水晶球を食い入るように見続けていた、おのずと顔が近くなる。
「私の目が悪いのかな、何だか要塞が暗く見えるのだが」リクター少将が片目を閉じる。
「少将殿の目は悪くありません。第二偵察部隊の報告で、木の要塞に土を塗っているのが確認されております」ロイド中佐がそう言うと、コクトー中佐がこう文句を言う。
「気に入らないですな、その話は初めて聞きましたぞ?」
「仕方が無いでしょう、第三偵察部隊の編制中にこの砦を無視して。要塞偵察に向かったのは【騎兵隊】を指揮していた貴殿です!」
コクトー中佐の眉毛が吊り上がってゆく。
「まあ待て」今にも怒鳴り合いを始めそうな二人を、マカロス・リクター少将が止めるとこう続けた。
「今回の演習、赤軍に第一王位継承者の参謀が入った事で。大分変えられたようだ」と。
「ですが要塞を作るという行為で、赤軍はどうやって青軍を侵略出来るのですか?」そう言ったコクトー中佐に、うなずくロイド中佐。それを見て少将は『この二人本気か』と思う。
さて、青軍の対策は如何に。
という所ですねぇ。
ではまた。




