レクターレ王国軍、青軍、動き出す。
青軍が積極的な偵察をしなかったのは、赤軍の目的をあらかじめ知らされていたからであった。赤軍の攻撃は青軍の守るどこかの砦への奇襲。もしくは小さな砦をあえて無視して青軍の主力への全軍突撃、くらいだろうと思い込んでいた。
もし赤軍がどちらを選んでも青軍のおこなう事は一つだった、相手の攻撃を受け止めてからの包囲作戦である。
数的に優位な青軍は、だから赤軍がどこを始めに襲って来るのかを待って入れば良い。そうして貴重な時間を失った、実に二十八時間も!
「…いくら何でも遅すぎる」青軍の参謀の一人がそう言った。
青軍の司令官はそのことばを聞いて、各砦に偵察部隊を出すようにと決断する。
第六砦から南へと進む十人単位の偵察部隊が、丘の間を蛇行する道へと到着した時に、鏃の付いてない弓矢が次々と飛んで来て【念話】でこう告げられた『お前たちは死んだ』と。
だが最後尾についていた【魔術師見習い】の青年には、まだ弓矢は当たっていない。彼は【念話】を砦にいる【魔術師士官】に飛ばす『敵発見』と、もっともそこまでだった、青年の回りに弓矢の雨が突き刺さり【魔術師見習い】の青年は精神集中を強制的に切断される。そして怒りのこもった【念話】が告げる『それ以外何か飛ばすと、矢が頭に刺さるぞ』と。
しかし時はすでに遅かった。第六砦から青軍の主力に【念話】が飛ばされる。青軍の参謀達は地図を広げて唸る、赤軍はこんな所で何をしているのだと。第六砦は青軍の支配する陣地では一番南にある砦である、攻撃するのならもっと早く出来るはず。
更なる情報を送れ、と【念話】で要求するが【偵察部隊とは音信不通】とだけ帰って来た。
「だったらもっと多く偵察部隊を出せ!!」青軍主力の参謀の一人が大声で叫ぶ。
どうやら先手を取られたな。青軍司令官マカロス・リクターはそう思い、そのよく通る声でこう言った。
「諸君落ち着け。今回の演習は今までの定石道理では無いようだ、いつでもどんな動きに対応できるよう準備を進めておけ」
参謀士官達がざわめく。
「つまりそれは、我々は欺かれている。という事ですか?」参謀の一人がそう言うと、青軍司令官マカロス・リクターは当然のように言った。
「そうだよ、だからまず情報を出来るかぎり集めろ。出来るかぎり多く、出来るかぎり正確なモノを、だ。いそげよ」参謀達が慌ただしく動き始める。
一人が第六砦周辺の、正確な地図を広げた。
三人の参謀と【魔術師士官】が、休息を取っている【魔術師士官】達を呼びにテントから走って出てゆく。
青軍司令官マカロス・リクターは、この場所からすぐ移動出来るようにと指示を出すと、騎兵隊を【強行偵察隊】として南に送り出したが、すでに三十時間も無駄にしていた。
この続きは、10日~20日待ってください。
けっこうお話が最初に考えていたモノと変わってきましたので。
何事も無ければ20日以内にまた、6話~7話を用意しますので。
ではまた。




