7回目の誕生日、上王達。その2、変異体。
一瞬の間をおいて四人の上王は大笑いする。
「まさにその通りだな。ここは寒すぎる」そう言ってまだ七歳になったばかりのアルテアが発した言葉を肯定したのは、最も年老いたロマス上王だった。
「本当に良く言いましたわ、恐れ知らずの金ぴかさん」シズル上王はそう言いながら笑う。
「ええ、本当にその通りですわ。私も昔からそう思っておりました」外見だけでは何歳なのか分からないユミエル上王が、大きくうなずく。
「アルテア=アトラスよ、こういう事は外からどう見えているかが大事なのだよ」グルス上王は重々しくそう諭すが、白い口ひげはピクピクと動いて威厳も何もなかった。
一頻り笑った後、ロマス上王は三回ほど咳払いをして。緩んだ空間に緊張感を戻してゆくと、いまだ男もしくは女のどちらでも無い体を持つ七歳の子供にこう言った。
「今日お前にここに来て来させたのは他でも無い、お前の能力についてだ」ロマス上王の威厳ある言葉が納骨堂に響く。
一瞬目をつぶってからアルテア=アトラス・アウグストスは言う「はい、わたしもそのことを聞きたいと思っていました。…ですがバン・アーレ先生は、それを知るのは七歳の誕生日の、上王様達との謁見まで待つようにと言われました」そう言ってアルテアは、バン・アーレ宮廷魔術師を見つめるとこう続けた。
「確かにわたしの体は異質です、ですがその事はすでに国民のほとんどが知っている事。それでも隠さないといけない事とは何ですか? わたしにさえ隠さなければならない秘密とは何ですか?」
まくし立てる様に問い詰めるアルテア=アトラスに、宮廷魔術師バン・アーレはこう言った。
「最初に言っておきますがアルテア様。ここまで隠して置いたのは意地悪をしていたからではありません。むしろ知らずに過ごして要られればその方が幸せだったからです」
アルテアの顔の色が見る見る悪くなって行く。
「それ程わたしの体は、酷いのですか」
「いえいえ、酷いとか、あと数年の命とかそう言う話ではありません。あぁ、お泣きにならないでください。アルテア様【変異体】と言うのはご存じですか?」
本当に泣き出すアルテアは、バン・アーレの問いに何とか答える。
「ま…、魔力……のせ…いで起こる……体…異常……」
「その通りです【変異体】と言うのは生まれながらにして【角】や【尾】【動物の耳】などを持つか、あるいは普通の身体より【多く】又は【少なく】持つ【体の部位】それと、アルテア様のように【両性】又は【無性】などの魔力による身体的異常全般を指します」
バン・アーレはそう言って更に続ける。
「【変異体】は魔力を使う生物にとって、避けられないリスクなのです」
この世界の決まり事その2、変異体についてのお話です。
その1は、鉄は魔法を絶対に通さないです。
では40話で、会いましょう。




