ネズミ、用心棒になる。
トルクゥの助けたルネと言う娘は、この森の近くにある村の村長の一人娘だった。
村長の家は立派な物だった。少なくともトルクゥの家よりは遥かに大きい。村長はトルクゥを手厚くもてなした、エール酒を飲む村長はトルクゥになんと金貨二十枚を払い「この村に好きなだけいてくれ」という言質まで送った。
つまりこの村の一員として迎えるというのだ。普通、村人として迎え入れるのは結婚など、外の血を入れるためなのが当たり前で、それ以外では村は中々人を受け入れない。
うっかり外から人を入れて、その人物が盗賊などであった場合、下手をすれば村人の皆殺しだってあり得なくない。随分信用されたものだとトルクゥは思う。
そして村長は今この森の周囲で起きている問題を俯き加減で話し始める。
トルクゥは心の中で、“何かがあると思っていたよ”と愚痴ってみたが。ここまでの歓迎をされるとそんな事など言えるわけもなく、村長の話しをおとなしく聞く事にした。
村長は話し始める数年前からあの森には、エルドルという魔王が部下のゴブリン共と住み着いている事。そして時々森の近くにある村落を襲い人々をさらっていく事。先日も隣の集落が襲われて多くの人々が行方知れずになっている事などをトルクゥは教えられる。
トルクゥは頭を抱えたかった。“だからどうしろと”三匹のゴブリンでさえ何とか倒せる程度の自分に、魔王を倒せというのか? この村長は。
村長は言う、“何も魔王を倒してほしいとは言わない、ただこの村のために力をかして欲しい”と。
なる程とトルクゥは思う、ようするに『用心棒』が欲しいのだこの村長は。ただそれなら町で『冒険者』を雇えば良いと思い、そう村長に言ったが村長は首を横に振る。すでにいくつかの村が『冒険者』を雇ってしまっている事。そして『冒険者』を雇っても襲われる村は襲われるのだと。
“厄介な事に首を突っ込んだ物だ”そうトルクゥは思う、自分はその『冒険者』になるために自分の村を出て来たのに、ここでやらされる事は『冒険者』の仕事その物だった。
だがここで逃げ出すことは出来ない、何故ならここで逃げ出せば“自分には『冒険者』の才能さえ無い”という事を認めてしまうからだ。
トルクゥは心の中とは真逆の事を宣言した。つまり「喜んでやらせてもらいます」と言ったのだ。
3話目です。が、あいつはまだ出て来ていません。そーゆー話もあり、と考えています。
が、今回の話ではちゃんと出ますので。安心(?)してください。