救いの城
「軍を動かす、だがそれは魔王とその魔王の軍隊の陽動に過ぎない」国王グレイバルはそう切り出して二人の『勇者』に、凄みのある笑みを浮かべて続ける。
「勇者ログナールと勇者アーグ、そして魔術師ドーグラの三人で東の古城に侵入してもらう」
そう国王は言って壁に掛けてある一枚の古そうな城の絵を指さす。
絵の城は小さな山の頂上に立っており大きくもなく、かといって砦よりは立派だった。
「あれがその古城ですか?」ログナールは国王にそう聞くのと、アーグが。
「なんであんな城の絵がこんな立派な宮殿に掛かっているんです?」と国王に聞くのはほぼ同時だったが、国王グレイバルは気にせず二人の疑問にこう答えた。
「あの城の名は、救城ローサーク。むかしこの国が滅亡寸前まで進攻された時も、当時の国王を守り。反転攻勢まで陥落しなかったこの国の真の宝なのだ」国王グレイバルはその絵に深々と頭を下げるも。
「その城を事もあろうか魔王に乗っ取られた。我が人生最大の汚点!」グレイバルは歯を食いしばって悔しがる。
「まことに由々しい事です」宮廷魔術師のドーグラも両手のひらを握りしめて、更に続ける。
「あの城は特に攻めづらい。城の土台になっている山の中は改築に改築をかさねて、何層にもなるダンジョンとなっておりますので。軍隊を下手に突入させるわけにも行きません」
「侵略者に備えてのダンジョンだったが、こちらが攻め込む事になると本当に鬱陶しいものよのぅ」グレイバル国王は髭をいじりながら、そうつぶやく。
「空からの攻撃は出来ないのですか?」アーグは国王陛下にそう聞くと、グレイバルは即座にこう言った。
「無理だ。あの城の上空には強力かつ巨大な目に見えない魔法の防壁が、何重にも貼られている。過去の演習でもあの防壁を突破した将軍は一人もいない」
「過去の演習であの城を攻略出来たのはたった一人のみ。その方法も今回行おうとしている少数精鋭の小部隊でダンジョン攻略をして、敵役の司令官を暗殺すると言うものだった」魔術師ドーグラはそう話に割り込む。
「…そうであったな…」国王は寛大にも自分の非を認めた。だが、こう注釈する事も忘れなかった。
「だがそれでも、正攻法であの城を落とした者はまだいない」これには宮廷魔術師もうなずくだけだった。
「……」勇者ログナールと、勇者アーグは互いの顔を見ながらこう思った。
(そんな所に向かわなければならないって言うのかよ。何という無茶苦茶な!)
救城ローサークの登場です。
この段階ではもう少し長く書くつもりだったんですがね…。