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ヒマな魔王様はヒマが欲しい  作者: さんごく
5章・魔王誕生、その二。

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レクターレ動乱。末路。

【司祭】アンソニー・バレンツがそう叫ぶと、自分の体へ強制的に【マナ】を送り【オド】へと変換して、骨格と筋肉を【強化】した。そして次の瞬間筋肉が膨張を始める! 

 枯れ枝の様だった手足が、ミシミシと音を立てて膨れ上がる。

 洗濯板のようにあばら骨の浮き出ていた胸板は、張り裂けんばかりに胸筋が膨れだす。

 最初の、肩から垂れ下がっていた青銅製のチェインメイルも今は、その発達した筋肉に千切れ飛びそうだった。


「私と同じ、──いや。向こうの方が私を上回っている。伊達に年は取っていないか」

 そう言ったのは【アルテア軍】の【魔闘士】の一人で、身体強化をして見せた者だった。


「驚くのはまだ早い、出て来い、皆の者。お前たちのご主人様の命令だ!」

 そうアンソニー・バレンツが大きな声で呼ぶと、藪の中から三人の筋骨たくましい。上半身はだかの若者たちが現れる。だが、その顔はどこか虚ろに見える。


「おい、あいつの持っているバデレールは!」

 風が渦を巻くスピアを持つ【魔闘士】が、穂先をそいつに向けた。

「アレはまさしく『水晶のバデレール』! このレクターレでは、王族のみが帯剣出来る武器! オイ、【司祭!】お前まさか。ミリアン様を」

【魔闘士】の一人、炎を噴き出すバデレールを持つ男性の手が震える。

「いや、待て。ミリアン様の髪の色は黒! だがあの男の髪は茶色い。ミリアン様では無い」

 不定形となった青銅製のシールドを持つ【魔闘士】がそう言った。


「クッフッフッフ、ミリアン様をあのような【実験】には使わんよ、あの者はロスコー・アウグストスを打倒した者。もっともそれ程の偉業を成し遂げながら、その事を悔いており。【アルテア軍】へ自首しようとしたので、仕方無く、私が推し進めていた【強化兵】への実験体の一人になってもらったのだよ」

 アンソニー・バレンツはさも当然のようにそう言った。


「それは本人の希望だったのか?」

 ハル・ラムズは解かっていても、敢えてアンソニー・バレンツに聞いた。


「馬鹿を言え、本人に適性が無いのだから。あの身体になった瞬間に、寿命はもって一~二年。本人の希望など聞いてどうする?」

 これもまた当然と言いたげに、アンソニー・バレンツは言った。


こう、書いていてなんだけど。

この教団って【悪の秘密結社】だよねぇ。

まぁ、狙って書き始めたのは事実だけど。

では、また次回にお会いしましょう。

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