レクターレ動乱。鉄と魔力と歪んだ愛情。
「どぅだぁ、オレの愛する【精霊達】は、とてもいい声で鳴くだろう?」
そう言ってスターク・ロンはわざとベルトを揺さぶった。
「グッ! この外道が‼」
ハル・ラムズは両目を固く閉じて、両手で耳をおさえて第三の目で睨む。
【鉄は完成させた【魔法】を霧散させてしまう】
そしてそれだけでは無い。【鉄はオドもマナも通さない】
まるで鉛がエックス線を通さないように、鉄は【魔力】を通さない。
その為、生存に【魔力】が必要な存在。マモノや、妖精。そして精霊などは、鉄を嫌う。
その中でも【精霊】はそのからだを維持するために、【魔力】をどうしても必要とする。
【精霊】とは言わば“意思を持つ【魔力】”である。『鉄に触れる事』は【精霊】にとって“死”を意味する。
【精霊】を鉄の管に入れると言う行為は、人間で例えるならば。無数の針が内側にはえている犬小屋の中で、生活させる行為と同じである。身じろぎでも取ろうとすれば、容赦無く針が皮膚を破き鮮血で体を濡らす。
そんな環境で何日も、何ヶ月も生活させられたら。そのような場所に閉じ込めた相手の靴に、キスをする行為をし出しても仕方が無い。
「何とでも呼ぶがいい、俺の『愛』に応えなければ。俺はどのような行為をもちいてでも返事を聞いて見せる!」
スターク・ロンの目はすわっていた。まるで、数年に及ぶ『愛』の告白への返事を待った末に、とうとう人情事を決意した『頭のイカレタ』人間のように。
「哀れだな、スターク・ロン。お前には【精霊使い】の才能が無かった、ただそれだけの事だと言うのが解らないとは」
ハル・ラムズは思う、答えがすでに出ているのに、それが分からない。──いや、解かっていたのに『そのような答えが聞きたかったのでは無い‼』と、駄々をこねる“幼児”のごとき思考。こいつは心の根っこのところが腐った赤子だ。
「黙れ! 黙れ黙れ黙れぇ‼ 俺は間違っていない! 俺程【精霊】に詳しい【精霊使い】はこの世にいないのだァァァ‼」
案の定、と言うような反応を見せるスターク・ロン。
ハル・ラムズは考える、私がこの男と同じ境遇だったらどうなっていただろうか。
「──」
途中まで考えてやめた、私はスターク・ロンでは無いし。それ以上にあそこまで愚かしい自分、と言う存在が思い付かなかったからだった。
ヤー、書くのに時間がこんなにかかったのは、久しぶりです。
アイデアがあっても全然書けなかった。
では、次回にお会いしましょう。