レクターレ動乱。戦闘準備。
脛までしかまばらに生えていない雑草に足を取られながら、低い丘から一人の【兵士】が慌てて降りて来る。
「【念話】も使えない【兵士】を、何故一人で【偵察】に行かせたのか!」
【第三歩兵大隊と、第四弓兵大隊】を指揮している、ダストン・ロイド少将は。大きな声で【第六偵察中隊指揮官】クック・ハル大佐を罵倒した。
「仕方が無いのですダストン・ロイド少将。私の中隊で【念話】が使える【まともな兵士】は、十六人に一人しか居ないのです!」
頭髪をそり上げて日焼けした、まさに『たたき上げの古参兵』と言った風ぼうの。筋骨隆々とした体に真新しい【大佐】の襟章を付けた、クック・ハル大佐は帽子をとって。
見た目、水太りした運動神経に乏しい身体の襟首に、これまた真新しい【少将】の襟章を付けている。──と、言うより付けさせられた『万年下士官』と言った方が良い。ダストン・ロイド少将に頭を下げた。
「………ふぅ、その件は何とかならんのか?」
ダストン・ロイド少将はプヨン、と音がしそうな腹を動かして愚痴を言うが。
「ほとんど無理では無いかと思います、少将。我々の首にこの様な“場違い”なモノを付けないと、【指揮官】の数さえそろえられない状況では……」
そう言ってクック・ハル大佐は、乗りなれない馬の上で腕を組む。
「たいへんだあぁぁ‼」
そう言って足で雑草をかき分けて、一人で偵察をしていた【兵士】が近づいて来る。
「どうしたぁぁ! また我らに【騎兵隊】でも近づいて来たのかぁぁぁ?」
肩で息をするかのようにしながらも。全速力で走って来る【兵士】はこう言った。
「その通りですが、いつもとちがいますうぅぅぅぅ‼」
「? どういう意味だ?」
ダストン・ロイド少将はまだ気づいていなかったが。クック・ハル大佐は、顔に刻まれたしわを深くする。
「アッガス・マルド少佐と、レイガス・サロー千人隊長の【連合騎兵隊】が、あの丘の向こうで集まって──」
「全員戦闘準備ぃぃぃ‼」
クック・ハル大佐は【偵察兵】が全てを言い終わる前に、いまここにいる全員に命令を飛ばした‼
「まさか、先手を打たれたのか?」
ダストン・ロイド少将の顔には、狼狽の色が見える。そして頭が真っ白になる。
「ダストン・ロイド! 全軍に【念話】を飛ばせ‼ いますぐに、だ‼」
クック・ハルの大声で、少将は我に返り。【念話】が【全ミリアン軍】に飛ばされた!
第3章で気にいった『古参兵』に、名前をおつけました。
クック・ハル大佐は、50代と言う設定です。
しかしこの人も何故【ミリアン軍】何かに入ったのか…。
きっと不幸の星の元で産まれたのでしょう。
では、次回にお会いしましょう。




