レクターレ動乱。【ミリアン軍】作戦会議、その二。
「まずは、これを見ていただきたい」
そう言って、金色の髪を短く刈り揃えた【精霊術師】スターク・ロンが。一メール(約一メートル)四方の白い布を取り出して、指令室にあるテーブルに広げた。
「あのぉ、これはいったい何なのですか?」
ざわつく【参謀官達】の中から、勇気のある一人が。四角形──いや、それにしては所どころ線の繋がっていない。何かの幾何学模様のようなモノの描かれた白い布を、右手人差し指でさした。
「これは【アルテア軍】が構築した陣形を、真上から【火の精霊】が焼き描いた図形です」
一瞬の静寂の後。【ミリアン軍】の【参謀官達】は、身を乗り出してその図景を見る。
「こ、これが【アルテア軍】の構築した、陣形図!」
一人の【参謀官】が、まれで“宝の地図”を渡されたように、目を皿のようにして見入る。
「……何と精密な図面か……」
もう一人の【参謀官】が、一つ一つの石垣さえ書き込まれたその図を見て。感嘆の声を上げる。
「なるほど。この図形はインクで描かれたのでは無く、『火であぶって』描かれたのですね」
更にもう一人の【参謀官】が、その図形を見てまるで唸るように呟く。
「──何と凄まじい──」
他の【参謀官】と違い。あえて身を遠ざけて見ていた【参謀官】がそう言うと。【精霊術師】のスターク・ロンは、胸を張ってこう言った。
「どうですか! この俺の使う【精霊達】のちからは‼ 素晴らしいでしょう⁈」
すると、その【参謀官】はこう言った。
「確かに貴方の使う【精霊】はすごい。だが、それ以上にすごいのはこの陣形を考えて、その指示でこれほどの陣地を造りあげた【兵達】です」
その言葉を聞いて、ハッとした【参謀官達】は。二歩程後ろに下がり改めてその図を見た。
「………なるほど、確かにこの陣地は目を見張る物があります」
そう言った一人の【参謀官】の横から、眼鏡をかけた【参謀官】は言う。
「縮尺は、縮尺はどのくらいなのだ?」
「──おそらく。この陣地の中心にアルテア様がおいで、で在ろうからあそこの通路の幅が、ひと一人か二人分になるのでは?」
その言葉で【参謀官達】は改めて、その一メール(約一メートル)四方いっぱいに描かれた図面を見る。
「それではこの陣地は最小でも一キ・メール(約一キロメートル)は超える事になるぞ‼」
「いや、この陣地図はあくまで中央のみ。【騎兵隊】が活躍する場面だってあり得る……」
その言葉に【参謀官達】は、『我々はとんでもない相手を敵にしたのでは?』と思った。
【ミリアン軍】作戦会議その2、でした。
『とんでもない相手を敵にした』って、そりゃそうだ。
相手は『主人公』なのだから。
では、またお会いしましょう。




