レクターレ動乱。ミリアン・アウグストスの参戦。
朝日の昇る少し前。ほとんど突貫工事で作られた、かつて立派な城塞があったであろう。石垣の上に作られた“丸太を組んで出来た木製要塞”の壇上で、ミリアン・アウグストスがすでに疲れた顔をしているが。目は死んでいない自分の部下へ語り掛ける。
「諸君、ご苦労だった、さぞ疲れた事と思う。だがまだ私達の本来の目的は、始まってもいない」
明らかに普通の目の色とは違う【反乱を起こした陸軍】と、【民兵達】はミリアンを見つめていた。それもそのはず、彼らは“極めて依存性の高い薬物”を。摂取していたからだ。
「いま君達の苦しさは私には、推して考える事も出来ない。だが、これだけは言える、此処までの献身にありがとう。と」
ミリアン・アウグストスは、ハンカチで両目のめがしらを押さえつつ。嗚咽しているかのような声でそう言った。
『ぐす』壇上の回りに集まった、一万五千人の人々の中から。すすり泣く声が聞こえ出す。
「君たちは弱い! 【重騎士】アッガス・マルドや、【弓騎兵】レイガス・サローとその部下には及びもしない。だが、それがどうだ! 一夜でこれほどの要塞を築き上げたではないか!! これが、ただ弱いだけの人間に出来るだろうか? 少なくともアッガス・マルドやレイガス・サローには、一夜で要塞を築く事など出来はしまい!! これは誇ってもいい!!」
『ぐすん』・『ぐすん』・『ひっく』・『ひっく』嗚咽の声が、人々の口から響く。
「みんなは、すでに誰もやれない事をやってのけている。すでにだ! ならばこの続きが出来ないわけがない! ならばやって見せてくれ!」ミリアン・アウグストスが、回りを見渡してこう続けた。
「あの、アッガス・マルドを打ち倒し、レイガス・サローを打ち抜き。そして──」ミリアンは一瞬言いよどんだが、半ば叫ぶようにこう言った。
「──あの半陰陽のバケモノ。アルテア・アトラウス・アウグストスを、私の前で膝まずかせて連れて来て欲しい‼」
『オオオォォォアアアァァァァァ‼』
『ミリアン・アウグストス様アアアアアア‼』
『この国の真なる王オオオオオオオオオォォォォォ‼』
精神的にハイになる“薬物”を投与された群衆の叫ぶ声が、大きな波のように一万五千人の雄叫びとなって、要塞全体に広がってゆく。
「諸君、私を王と呼んでくれるのであれば。私の頭に【正当なる王の王冠】をのせてもらいたい。その為に、私の為に! 死ぬ覚悟が在るのならば‼ この私の頭上に【正当なる王の王冠】を‼」
『王の頭上に【正当なる王の王冠】を。王の頭上に【正当なる王の王冠】を‼』
この戦いに本来消極的だったミリアンは、ここで正式にアルテアと戦う事を決めた。
アアア、投稿する時間を、越えてしまったぁ!
っと言う訳でこの日、この時間となりました。
ミリアン・アウグストスの、正式参戦するお話しでした。
では、皆さんまた次回。




