ネコ、多国間との国交を望む。
アルテアは更に続ける「先ほど『国の誕生は犯罪』と言いました。その考えをわたしは変えません、だってその通りなのですから『恫喝と脅迫』で生まれたのが『ふつうの国』の正体です」トルクゥは自分の手のひらに、いやな汗を掻いているのを感じた。
「もちろん『ふつうの国』はその様な事を認めません。当たり前です、自分達が犯罪者の末裔である事をどこの国が認めるというんです?」アルテアの発言にまた熱が入る。トルクゥは思う、いつまでこの様な(痛みを伴わない)苦痛を味わえばいいのかと。だがアルテアを止めるのは転がり落ちる岩を止める事より難しく思えた。
「だからこそ『ふつうの国』とは友好関係を結びたい」
「はい?」突然のアルテアの発言に、トルクゥは思わず間抜けな声を発してしまう。今までの罪の告発から何がどうして“友好関係”という事に繋がるのだろうか?
「こう言っては何ですが『魔王の国』というのは突然出来てしまう。まぁ実際には色々とあるんですけど『ふつうの国』にはまさに。朝に目を覚ましたら隣に『王国』が出来ていた! しかもその『王国』の『王』は『魔王』という得体の知れない相手だった。──といったところでしょうか」そう馬車の天井を見ながらアルテアは言う。
「こうなると『ふつうの国』はその本性を見せ始める。どんなに普段『汝の隣人を愛せよ』何て言っていても、その暴力的な本来のすがたを晒してゆく」うんうんと唸りながら、胸の辺りで腕を組む。その形の良いバストを強調する事になっているが、今のアルテアはそんなことなど気にもしていない。
「しばらくは混乱しているが、その後が怖い。やれこの国の敵だとか、やれこの侵略者だとか、そして誰かが言い出すんです。あの突然現れた『魔王』の国こそ伝説に出てくる『魔神の王が住まう国』だと」そう言ってアルテアは大きなため息をつく。
「こちらには戦う意思など無いと言っても、あちら側が戦いたくてしょうがない。という態度を崩さないのでは、こちら側のとれる態度なんて決まってしまいます」そう言って自分の拳をぶつけてこう宣言する。
「国どうしの戦争のはじまりです」
トルクゥには二の句が出て来なかった。反論する事さえ出来なかった、何故ならアルテアの顔が噓を付いていなかったからだ。
アルテアは“人の心を読む方法には魔法以外にもある”と言っていたが、こんなかたちで知る事になるとは思わなかった。
落ち込むトルクゥにアルテアは言う「でもね、わたしは少数派なのですよ。わたしがこう考えていても、それはあくまでもわたしだけの考えに過ぎません。はっきり言って交戦的な『魔王』の方が多いのも事実です。例えば『魔王エルドル』のような奴などは」
アルテアはあえてその名前をだす。
トルクゥの目に、ひかりが戻るのに時間は要らなかった。
さてこの話もあと4話。
どういうオチが付くでしょうか?
お楽しみに。