ネコ、国の成り立ちを語る。
トルクゥは口を大きく開けて絶句する。それでは“私達は詐欺師です”と認めている事にはならないか?
「はい、その通りです。これはとても大きな“詐欺行為”です。ですがこうも言えます、“国の行う殺人は死刑”で、“国の行う大量殺人は国防”です」アルテアは顔色も変えずにそう言った。
「これはどこの国だろうと、どんなに人の良い『国王』であろうとも同じ事を言うでしょう」
「『魔王』の国と『王』の国の違いというのを考えたことはありますか? 二つの違いはただ単に“歴史”があるか、だけです『王』の国の方がただ古くからある、それ位しか違いが無い。昔話をします国とは何でしょう?」そう聞かれてトルクゥは悩む。“国”とは何かなんてそれまで考えた事も無かったからだ。
「国とは、かつてその辺りを守っていた『武装勢力』の集団が、大きな権力を持つ様になった事で始まります。要するに始まりは『用心棒』なんです」
「お前達の集落を焼き討ちしようとしている奴らから守ってやる。その代わり、金と食料を少しばかり分けてくれないか? これが始まり」アルテアは指を折って話を続ける。
「その後『武装勢力』は集落に関する色々な揉め事にも口をはさみ出し、いつしか集落の殆どを手中に収めてしまう。こうして『武装勢力』と集落の関係は『守る者』と『守られる者達』へと変わって行く」アルテアの話は更に続く。
「『守る者』はその他の集落へも手を伸ばして行き、いつの間にか『原始的な小国』が出来てしまう」アルテアの右手は握りこぶしへ変わっていた。
「これが『王国』のだいたいの始まりです」アルテアは握りこぶしを、パッと開いて右手をひらひらとさせる。
「どうです? このまるで寄生植物のような成り立ちは?」アルテアの目は、どこか冷めていた。そしてトルクゥの顔色はすっかり血の気を失っていた。このような事を誰かに聞かれていたら、トルクゥは吊るし首の刑にされるだろう。
「保険制度が詐欺? ハハッ! そもそも『国』という組織の誕生自体が大きな犯罪です!」
アルテアの顔は今にも唾を飛ばしたい、そんな表情をしていた。いや、ここが綺麗な馬車の中でなければ、アルテアは躊躇などしていなかっただろう。
「わたしが『魔王』をしているのは、わたし以外に誰がなっても誰も納得しないからです。そうじゃ無ければこんな疲れる仕事を選びません!」アルテアの声は少し小さかった。どうやらアルテア自身も、自分がとても過激な意見を口に出している事を悟っているらしい。
すっかり冷めてしまったお茶をアルテアは飲み干すと。ポットから熱いお湯を急須へと注いで、ティーカップにお茶を淹れる。トルクゥも冷めたお茶を口にする。とても美味しかった。
完全に指が滑ってます。
本当になぜこんな話を書いたんだか。