レクターレ動乱。本物。
「そんな、スターク・ロン様ほどのお方が負けるなんて!」中肉中背、どこにでもいそうな中年女性が後ずさりする。
その瞬間中年女性は、【風の精霊】によって頭を切り落とされる。
「俺はまだあいつに、『三つ目』のハル・ラムズに負けた訳では無い!」スターク・ロンはそう叫ぶ!
『そう俺はまだ【術】であいつに負けた訳ではない、【科学】とか言う得体の知れない【学問】で出鼻をくじかれただけだ!』
「おおぉおおぉおお!」スターク・ロンが【マナ】をその体に取り入れる。先ほどの【風の大精霊】に与えてしまった【オド】を【魂】を補充する。そして彼の周りに漂う、彼に。スターク・ロンに『絶対服従』させられた複数の【精霊】に【オド】の欠片と共に【命令】を出す。
【あの三つ目野郎を切りきざみ、爪も残さず消し炭にしてしまえぇ!】その瞬間【魔術師】でなくても解かる程、イヤな気配、殺気がスターク・ロンの周りからハル・ラムズに放たれる。
「むう、これはいけません」そうハル・ラムズは言うと、自分の胸の前で両手を合わせて。【特殊技能・気圧制御】を使って【空気の盾】を作り出す。
スターク・ロンの周りにいた、二体の【風の精霊】と、同じく二体の【火の精霊】が【実体化】をして襲い掛かって来る、その姿はまるで頭部だけの狼の様だった。
だがそんな強力な四体の【精霊達】が、ハル・ラムズには近づく事も出来ない。
手を変えてハル・ラムズに近づこうとするが、それを見越したように盾を【精霊達】の前に持って来るハル・ラムズ。
「どうした! なぜ近づかない! そんな空気の盾など、切り裂いてしまえ!!」だが四体の【精霊達】は、鉄でもない、【魔法で作られた盾】が近づくのを露骨に嫌がる。
イライラしたスターク・ロンは、左手の中指にはめていた、指輪の一つを引き抜くと。その指輪に命令を下す。
「あの【魔法の盾】に突っ込め」
ビクン、と一体の【風の精霊】が半透明な身体を痙攣させると、直線的に【魔法の盾】へと突っ込んで行く。
その【風の精霊】が大きな口を開いて、【魔法の盾】に嚙みつこうとした瞬間。
膨らませた紙の袋を叩くような大きな音を立てて弾けた!
「…真空の盾だったのか…」スターク・ロンはそう言うと、奥歯を噛み締める。何たる不覚。
「今回のタネは知っていたようですね。正解です、そして私も理解しました。貴方は本当の【精霊術師】ではありませんね?」ハル・ラムズはそう言って口の両端をつりあげた。
スターク・ロンにはその笑みが、自分を嘲っているように見えた。
次回、お楽しみに。




