ネコ、保険を語る。
「保険と言うのは、要は怪我や病気になってからお金を集めるのでは無く、みんなで少しずつお金を出し合って、怪我人や病人の負担を出来るだけ低くする制度です。…少し大雑把にいうとそういう事です。本当はもう少し複雑なんですが」トルクゥはなぜ今それをアルテアが言い出したのかわからずにいると、アルテアがこう言い続ける。
「お金持ちのひとはちょっとだけ多めに納めてもらいます。こうすれば貧乏な方でも多少は良い医者や回復術士の治療を受ける事が出来ると思いませんか?」
トルクゥはハッと思う、保険の事は少し解かった。要は周りでお金を少しずつ出し合って、誰かが病気を患った場合そこから出す。という事で間違っていないだろう。でも『魔王』アルテアの言っている事はそんな小さな事ではない。国全体で言っているのだ。
アルテアは続ける「お金持ちがお金を貯めこんでしまうと、市場でお金が不足してしまう。貨幣の価値が結果的に上がってしまう。それでは困るんです。だからと言ってあまりにも貨幣を作ってしまうと、何かのきっかけでお金持ちが貯めこんだお金を大量に使われた場合。今度は貨幣の価値が下がってしまう。どちらも国としては困ってしまいます。だからお金には動いてもらわないと困ります」本当に困ります、と、アルテアは困った顔で言う。
「さて、なぜわたしも含めて税金を払わないといけないかと言うと、どこかで一か所にお金が溜まってしまわない様に考えて出来た事だからです。どのような物でも溜まると良い事がありません」そうアルテアは言ってニコリと笑った。
トルクゥは悩む、何となくアルテアの言う事は理解できた気がする。──だがまだ何となくでしかない。アルテアの言う事が無条件で正しいとはまだ思えない、アルテアの言葉を信じてしまうと、お金を貯める事が悪という話になってしまう。トルクゥがそう聞くとアルテアは。
「そういう意味では無いんです。お金を貯める事が全て悪いという事ではありません。例えば家族の一人息子が病気になった場合に、お金が無いなんて事になったら困りますよね。だから貯金は大切な事です。ですが、お金が周りで少なくなってしまうと、結果的にお金を貯める事が難しくなります」それはトルクゥでも分かる、少ない物がさらに少なくなったら。それを貯める事はとても難しい。
「そこでさっき言った保険と言う制度が生きてきます。つまりタンスの中ではなく、国があなた方のお金を預かりましょう。そしてそのお金で商売をして、あなた方のお金をもっと増やします。そして保険にお金を預けている方の誰かが病気になった場合、そのお金で病気やけが等の治療費に充てる事を約束します。──とね」
トルクゥはさらに保険という制度を理解した。だがまだ完全に納得が出来ない、何といえば良いのか、なにかが引っかかっている。そう、とても良く出来た詐欺のような感じが、どうしても拭えない。
「その感じは有りましたね、だからこう思えば良いのです。保険制度が崩壊する時は、この国が滅ぶ時だけだと。そうなれば自分達も滅ぶのだと思えば怖くないってね」
うーん、なんでこんな何かにケンカを売っている話を書いたんだろ?
思い出せない…。