ネコ、ネズミに税金の話をする。
「今このキャラバンを率いてくれているゼーダも、昔はある国の宰相まで登りつめたのだけど。少なくない公金を横領した前科があって、死刑になる前にわたしが救い出したのです」アルテアはそう言ってこう続けた。
「死刑を言い渡される程の事はしたけれど、文官としての才能は目を見張るものがありました。だから、わたしの右腕として働く気があるのなら助ける。と提案をしてゼーダはそれを承諾したので、我が国で働いています。まあ元々は善人なのです。目先のお金に目が眩んだのはしょうがない、二度としないと言いますしね」それに、これが最後のチャンスですからね。とゼーダの話を終わらせる。
「……えっと、わたしはどこまで話しましたか?」アルテアとトルクゥは真剣に考え始める。
トルクゥは腕を組んで考える、本当にどこまで話したか思い出せない。
それはアルテアも同じらしく、馬車の天井を見ながら「ウーン…」とうなっている。
「よ、よし。分からないのならしょうが無い、別の話をしましょう!」アルテアはそう宣言し話を始める。
「税金のお話などはどうですか? 『魔王』が国民から税金を徴収して、何に使っているか。なんて話はそうそう聞けませんよ?」トルクゥは“税金”と聞いて内心(エー?)と思う。それは当然の反応だった。トルクゥのような“元”村人にとって、納税の季節ほど憂鬱な時期はない。……、もっとも。『魔王』が徴収した税金の使われ方、というのも(ちょっとは)興味がある。もしかしたら『冒険者』となった時に話のタネになるかもしれない。
「まず、納税の義務は国民みんなに有ります。例外はありません。もちろん、わたしにも有ります」
「エ?」と、トルクゥは思わず声を出す。『魔王』が税金を払う? 王国の『王』なのに?
「はい、先ほども言いましたが、例外はありません。たとえ『国王』でもです。むしろ、率先して払わなければなりません」アルテアは真面目な顔をしてそう言った。
トルクゥは混乱する。どこの世界に自分に対して納税義務を行わせる『王』がいるというのか。
「ちょっと変わっているかもしれませんが、これもお金の回し方なんです。普通の『王』の場合は受け取った税金で贅沢な生活を送れば、結果的にお金が回ります。そう『王様』が贅沢な生活をおくらせる用に仕向けるのも、国保を預かる大臣の仕事です。が、我が国の『魔王』の持つ小さな、本当に小さい『国』の場合はその手は使えません。だから『魔王』は自分である程度お金を稼がなければならないのです」
アルテアの話を聞いても、トルクゥにはチンプンカンプンだった。アルテアもこれ以上の説明はトルクゥにはついていけないと思い、話を変える。
「ところで保険というのを知っていますか?」
トルクゥの頭はパンクしそうだった。
とうとう魔王が税金の話を始めてしまいました。
ま、まあ国を治める人ですから逃れられない事ではあります。
では、次回。