戦い。天空の鉄槌。
【魔王】アルテア・アトラウスと違い。空を飛び慣れていないメイ・ハーニスの回りを、泡のような【魔法の障壁】が包み込む。
何事かと、メイ・ハーニスが理解するより前に彼女を包み込んだ【魔法の障壁】は、とてつもない速度で町の外へと飛んで行く。
一瞬の出来事の為、思考が追いつけ無かったメイ・ハーニスだったが、自分と同じように運ばれる人々を見て。
「あぁ、自分達はあの地獄から救われたのだ」と理解した。
「さて、これでお前にはもう『人質』に出来る、生きた人間はこの町から居なくなったな」両手を腰にあてて、そう断言するアルテア・アトラウスの口もとには、とても凶暴な『笑み』が浮かんでいた。
グレータードラゴンの目に、驚きの色が浮かぶ。
一瞬で、グレータードラゴンの交渉材料が無くなってしまったのだ。
『どうすればいい』グレータードラゴンは自分の命を救う為に考える。いっそ自分の売り込み方法さえ考え始めるが、【魔王】は岩で覆われた天井を見てつぶやく。
「星が綺麗だ」と。
「流れ星!」煤で汚れた顔に笑みを浮かべて、少女がそう言った。
「え…」釣られるようにメイ・ハーニスも、空を見上げてその光景を見る。
ハルーの町から昇るけむりにも負けない位、大小の流れ星が光りながら降り落ちていた。
「もっと近くで見たいとは思わないか?」アルテア・アトラウスは、右手を上げる。
「まさか!」メイ・ハーニスはそうつぶやく、それ程その流れ星の数は異常だった。
「みんな伏せて大きく口を開いて!」アリー・ワンダがそう叫ぶ!
その言葉でメイ・ハーニスは、急いで地面に伏せると耳を手で塞いで口を大きく開く。
【天空の鉄槌!】天に上げた右手を、ドラゴンに振り下ろす! その瞬間十五メール(約十五メートル)の大きな隕石が、天井を突き破りグレータードラゴンを襲う。
隕石の落下で、ハルーの町を象徴する天井は完全に崩落する。──いやそれだけでは無い。音速をはるかに越える速度で落ちた隕石の衝撃波は、土煙をあげて伝播する!
衝撃波がメイ・ハーニスや、アリー・ワンダの下へ伝わるのに一秒もかからなかった。
【天空の鉄槌】によって発生した衝撃波は、この町を襲ったドラゴン共の起こした火災をすべて吹き飛ばした。
だからと言って誰も感謝などしなかったが。
これで第4章も後僅か。
でもこの第4章、オチを考えておりません!
で、では次回。




