戦い。ミナ・ファーロン。
「さあ、私たち四人であの大物を倒して。誰も文句を言わせない『ドラゴン殺し』の称号を手に入れるわよ!」ミナ・ファーロンは、そう言ってバトルアックスを両手で構える。
そう言った私はグレン・ドス、いいえ。愛しのダーリンを横目でチラリと見る。
このシャドラー王国の、ファーロン子爵家第三女。それが本当の私だった。
子爵家と言っても四代前は準男爵家。それも戦いで成り上がった歴史も浅い家柄だ。
代々【魔闘士】として戦い死ぬ事を『家の家訓』としてきた我が家の女性には、綺麗なお人形ではなく。無骨な武器が物心の付いたときから転がっていた。
そのような家で産まれ育った私には、それが異常な光景だとは、髪の毛の太さ程も考えた事など無かった。
そんな環境だからだろう。私のいる場所は戦場以外には考える事も出来なかった。
だから十六歳の日に、偶然。本当に偶然、父と母の会話を聞いた私は激しく動揺した。
私の婚約話をしていたのだから。
この戦い以外に、何にも教えられなかった女が、結婚? それ、何の冗談!?
しかもこの話はけっこう先まで進んでいて、何の後ろ盾も無い三女では今さら覆す事も出来そうに無かった。
だから私は家を出た。
何処の誰かも知れないヤツの家で、無駄に齢を取る位なら。【冒険者】になって太く短い人生を選んだのだ。
結果私はダーリンと出会った。ダーリンからは色々な事を教わった、それこそ本当に色々と。
『女』になったのもダーリンからだった。だから私はグレン・ドスに話した。私の家の事も含めて何もかも。
「まいったな、俺はお前に【木こり】の女房になって欲しかった。だが、そういう事なら俺はお前の『家』も含めてお前をいただく!!」そう言ってグレン・ドスは、私を優しく抱きしめてくれた。
男どうしの友情では得られないモノをダーリンはくれた。私の秘密も含めて私を手に入れる、そう言ってくれたのだ!
これ程の喜びは、ただの女では手に入れられない。だから私達は考えた、どのようにグレン・ドスを、私のダーリンを我が家に近づけられるかを。
そして私達は『ドラゴン殺し』になり、最下位の称号である『ナイト爵』をグレン・ドスに付ける事を考えた。最初はそれで良い、私のダーリンならそこから直ぐに──
「危ない!」ダーリンが私を突きとばす、そして私のダーリンは業火に包まれる。
ミナ・ファーロンか、グレン・ドスのどちらかを殺す事は、最初から決まっていました。
結局こうなりました。
この後、どうするかはこの先を読んでください。
では、次回。




