戦い。終わる町。
「あぁ、これで俺もようやく死ねる」ガン・オンは心の中で更に言葉を続ける。
「貴様に一矢報いて!」そう思うと、右手に持っていたスピアを今にも爆炎を噴き出さんとする【魔法陣】に向かって、最後の力を込めて投げつけた!
スピアの先端に取り付けられていた穂先は“鉄製”! 鉄はどんな【魔法】も無散させる。例えば爆炎を噴き出す【魔法陣】は、鉄の穂先が触れた瞬間に消え去る。爆炎を噴き出す【魔法陣】だけは。
だが製成された物質、或いは発生したエネルギーはその場に留まる。
千キ・ラム(約一トン)の岩を作り上げたが、慣性運動エネルギーを岩に与えていない場合、万有引力によって地面に落下する。放射エネルギーを与えていない爆炎は、発生したその場で爆発する!
グレータードラゴンの口の中で発生した爆炎の種は、喉の奥から出ずにその場で爆発を起こす!!
すぐ目の前での爆発は、ガン・オンを四メール(約四メートル)も後方へ吹き飛ばしたが、グレータードラゴンの受けたダメージはそれを凌駕する。
ドラゴンの身体にいくら熱に対し耐性があっても、内臓を焼かれるのは流石に辛い。
グレータードラゴンは、甲高い叫びにも似た鳴き声をあげてのたうち回る。
「よくあの状況であれだけ冷静に、ドラゴンの口の中にスピアを投げ込めたな感心するよ」ガン・オンの前に四人の男女が集っていた。一人は顔に髭をたくわえて、その大きな体を青銅製の鎧で包み込み、両手でグレートソードを持っている。
その男のそばに立つ女性は、黒いウェーブのかかった髪を持ち、少し際どい革の服の上にレザーアーマーを付けて。その手にはいささかゴツイ、バトルアックスを持っていた。
その女性のとなりには、ブロンドの髪が腰の辺りまである。美人ではあるがその気の強そうな目を持つ為、少し残念な女【魔術師】が立っていた。
「さあこれで左手は、また動くだろう」そう言って左手を治していた男性は笑う。その屈託の無い笑顔と、金色の背中まである髪の為に一瞬性別を間違えたかと思ったが、うん。男性で間違い無い。
「あなた達は【冒険者】か?」ガン・オンはそう聞くと。黒髪の女性が答える。
「ええ、初動が遅れた事をお詫びします」服装からは思えない位愁傷な言葉が帰って来た。
「あのドラゴンを倒す事が出来るのか?」ガン・オンの問いはもっともだった。たった四人で、グレータードラゴンと戦おうとしているのだから!
「分かりません」四人はドラゴンに視線を送る。ドラゴンは焼けただれた舌を口から垂らしながら、怒りに満ちた目でこちらを睨む。
「分からないって、貴方達は…」ガン・オンは絶句する。更に絶望的な意見が告げられた。
「出来るだけ人々を連れてこの町を出て、今夜でこの町の歴史は終わるわ!」
だんだんと、予定から外れて来ました。
でもまだ、本筋からは外れておりません。
さぁてどうしたものか。
では、次回。




