戦い。憩いの広場。
ドラゴンの群れは、横一列になりながら表通りを走り続ける。
鼻はすでにその半分ほどしか機能していない、当たり前だった。ドラゴン共は既に獲物の血肉を全身に浴びていて、人間の匂いなど分かりはしない。
ドラゴン共は新たなる獲物を探して要るのだが、見つける事が出来ないため、無謀にも町の奥へと入り込んで行く。
決してこのドラゴン達の知能が低い、と言う訳では無い。
ただ、大量虐殺の感覚に酔いしれて、冷静な判断が出来ていなかった。
だから見誤る。先ほどまであれほど居た獲物が何処に消えたかを。
「カ? ケ?」
ドラゴン共はこの町の中央に在る噴水のある広場にたどり着く。
周りを確かめる為に、せわしなく頭を振り回す十匹のドラゴン。
喉が渇いているのか、広場の中央にある噴水へとドラゴン共は近づく、その瞬間ドラゴン達が入って来た表通りへの道を、道路の下から飛び出した鉄製の杭が遮断する。
慌てて後ろを振り向く十匹のドラゴン、だがそれだけでは無かった。
この広場にはほかにも三方向に大きな道があったが、その道の下からも、鉄製の杭が出て来てこの広場から退路を消した。
事、ここに至って十匹のドラゴンは自分達がワナにはまった事に気づく。
この町には在る物が無かった。
それは闘技場。
この規模の町であるならばあって然るべき施設であった。
つまりこの人口の割には狭い町は、大きな面積が無いと作れない闘技場を、普段は憩いの広場として使えるようにこのような仕掛けを作ったのだ。
「随分と大暴れしてくれたな、レッサードラゴン共!」牢屋の扉と言っても信じてしまう位に頑丈な、両開きの扉が開かれ。二十人のニンゲンがこの、今まで何人もの人の血を吸って来た憩いの広場に入って来る。
「我らはパーティー名『強殺者』!」鉄製の武具を持つ四人の男はそう叫ぶ。
「パーティー『シャドウランナー』」黒い服装の、おそらく四人の男達はそう言った。
「『タイガーファング』だ、覚えとけ!」五人の若者達がそろってそう言った。
「パーティー『影槍』覚えておかなくて十分、あなた達は殺し過ぎた。楽には殺さないわ」アリー・ワンダがそう宣言すると、二人のメンバーも黙ってうなずく。
ミナ・ファーロンはバトルアックスを構え、ロドニー・ロアはソードと盾を構える。そしてグレン・ドスはグレートソードを両手で持ち、メイ・ハーニスが、魔導書を広げた。
四人は黙って相手を見る、何故なら。
うかつにもパーティー名を考えていなかったからだった。
この章も、やっと中編に入ってまいりました。
やっぱりチョット長くなりましたね。
はしょるのはイヤなので、もう少しお付き合いを願います。
では、次回。




