職場の推しに告白されまして、その後
柾木課長と付き合って2ヶ月。
唐ちゃんとは今でも仲良しのまま。すごく感謝している。
最近課長が自分のことを俺と言うようになった。何故か2人きりの時だけだけれど。
他の社員が次々と退社していく中、わたしと課長だけが社内に残っている。
わたしは、率先して課長の仕事を手伝っていた。
「さーちゃん、明日俺の家に来ませんか?」
作成した資料を揃えながら彼が言った。
「え?」
わたしはキーボードの上の手を止めて、顔を上げる。
一瞬の沈黙の後、課長の顔色が変わる。
「あ、あのそんな、構ないでください。別にさーちゃんが嫌ならそういうのは我慢しますし、さーちゃんがいいと思えるまで俺は我慢できます」
家?
そういう?
ああ、そういうのか。
仕事中にするような話ではないから、すぐには何のことか分からなかった。
しかし、わたしだっていい歳の大人だ。
そういうの、の意味は十分分かっている。
付き合って大分経つが、柾木課長はずっとわたしを大事にしてくれている。
我慢?
我慢させていたのか。
それで、これからもこんな綺麗な推しにそういうのを我慢させるのか。
というより、大大大好きな推しにわたしのことで何か我慢させるようなことがあること自体、とんでもないことではないか?
「どうぞ」
わたしは小声で返す。
「どうぞ?」
「あの、お好きにどうぞ」
耳が熱い。
精一杯のアピールで立ち上がり、両手を広げる。
「じゃあ、遠慮なく」
柾木課長は一瞬驚いた後、笑ってわたしに近づく。
「わ、違います。手を広げたわたしも悪いですが、今じゃないです」
「誰もいないし、少しだけいいでしょ? 少しだけ、先に貰います」
課長は満面の笑みだ。
ぎゅっと抱きしめられると、いつもの彼の爽やかな柑橘系の香りがした。
他の部署に誰か残ってるかもしれないし、警備員とか居そうですけど……。
最後までお読みいただきありがとうございました。