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7話 デート①

 呼び出されたのは土曜日の昼下がり。

 学校の最寄駅から何駅か離れた、ここら辺では一番大きい駅に集合となっていた。


 デートというわけじゃないが、女の子と二人でお出かけなんて期待しない方が無理がある。

 しかもその相手は学校でもトップクラスの美少女、遠月舞夜(とおつきまいや)だ。


 一つ息を吐いて呼吸を落ち着かせる。

 すると少し周りがざわざわとし始めた。暫くするとざわつきの原因を作ったであろう一人の女の子がやって来た。


「あ、お待たせ~」


 俺を見つけ、駆け寄ってくる遠月。

 白のワンピースは彼女にスタイルによく似合っていて人目を惹くのも無理はない。

 今か俺はこの女の子と一緒に歩くわけか。

 正直、不釣り合いであるが別に付き合ってるわけじゃない。ただの友達だし堂々と歩けばいいのだ。


「待った? ちょっと遅刻したかも」

「大丈夫、それより似合ってる。その服」


 何か言おうとした結果、よくわからない言葉になってしまった。遠月は一瞬、疑問符を浮かべていたがすぐに微笑む。


「ありがと。じゃあ行こっか」




 やって来たのは駅ビルの中にある本屋だ。

 遠月はずっしりと並べられたラノベを見て声を上げる。


「こんなにあるんだ……」


 ふらふらと右足、左足と遠月は歩き出し、キラキラと目を輝かせながら一冊のラノベを手に取る。

 金髪のツインテールの女の子が表紙の本。愛でるような優しく次のページを開いてじっくりと挿絵を眺めていた。

 それから裏に書かれているあらすじを読んで本を元の場所に戻す。


「気に入らなかったのか?」

「ううん、タイトル覚えたから後でまとめて買うの。手に持ってたら他の見る時に邪魔だよね」


 確かにそれはそうだ。

 もちろん俺が本屋で買い物する時はそうしているが、初心者であるはずの遠月が既にマスターしているとは。


 ……あれ、俺必要か。

 既に一人で次々と物色しているみたいだし、完全に俺は荷物係みたいなポジション。


「鈴城くんが貸してくれた本の続きってどれ?」

「あーそれは、ここに」


 その本の場所に案内して二巻を差し出そうと思ったが、一巻と三巻だけ。二巻だけが置いてなかった。


「あーもっと早く来れば置いてたかもぉ」


 心の底から悔しそうな声を上げる遠月。

 そこまでハマっていたとは思わなかった。俺としてはオタクといってもミーハーオタク程度にするつもりだったけど、勝手に奥深くに行ってしまいそうな勢いだ。


「多分、他の本屋に行けばあるよ」

「じゃあそこで買う」


 少し声に元気がない。だがラノベは次々と手に取っており、ずんずんと奥へ奥へと突き進んで行く。

 落ち込んでいた様子の遠月だったが、すぐに元気を取り戻していった。


「あ、これ可愛い。これも可愛い!」


 遠月は俺に一冊のラノベを見せてきた。

 見たことはあるが、読んだことはない。可愛い、と言われれば可愛いが別に何がそこまで彼女の興味を掻き立ててるのか俺にはわからなかった。


「オタクだね、遠月は」

「え、そうなの?」


 よく考えればオタクなんて人から教えてもらうものではない。好きなものを追っかけていたら勝手になっているものだ。


「まだ完全なるオタクってわけじゃないけど、素質はあり過ぎる」

「嬉しい!」


 オタクの素質があると言われて喜ぶのは、きっと彼女だけだろう。

 軽いミーハーに、なんて思っていたが普通のごくありふれたオタクにしてあげた方が彼女は喜ぶかもしれない。


「遠月を立派なオタクにする前に一つ聞いておきたい」

「おっす、師匠。なんでしょうか」

「ラノベのなにが興味ある?」


 キャラ、シチュエーション、設定、イラスト、文章とか色々あるが、彼女は一体なにに惹かれたのだろう。

 そんなことをふと疑問に思ったから聞いた。

 彼女はいじらしい表情をしてから微かに笑う。


「女の子かな。……私、二次元の女の子が好きかも」

読んでいただきありがとうございます。


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